『わかる』ハシモト会長かく語りき

第14話 内助の功「マイナスの世界をやってきた」

振り返ってみれば、自分の人生、不思議なことだらけです。
商売も、儲かるからやるのではなくなんぼ損したらやれるかな・・・そう考えるのが身についている。
相手に何をしてあげたらどうなっていくやろ、という心を持って行動してきたんです。
それが大事やと思う。

そんな私が今日あるのも、今は亡きうちの嫁はんのおかげやなぁ。
文句一つ言わん女やった。
私は「こうしたよ」という報告はしても、相談は一切なし。
独立する時もそうやった。

人脈も、金もないところへ、誰もやったことがない紐の商売をやろうというわけやから、そんなこと嫁はんに言うても、どうにもならへん。

「あんたがやることやから、あんたが責任とったらええやないですか。あかんかったら、また戻ればいい。ゼロから始まったのではなく、あんたはマイナスの世界をやっとるんやから。これ以上、貧乏にはならへんでしょう」

すごい女やと感じたのは、私がありったけの金で人を助けて、スッカラカンになっても、「できる人がするもんや」と言うだけ。
だから、自分らはアパート住まいしてでも、兄弟に家を持たせて、余裕ができてから自分らの家を買うたんです。
そんなことして、なんとかなってきたのが不思議や。

「これだけの金いるんやけど、どないしよう」と言うてると、どないかなるんよ。
三十五年前、このビル買うた時も、金は一切あらへん。
でも、なんとかなった。不思議やねぇ。
運の強い女やった。
賭け事でも、何でも必ず勝つ。
そんな強運に私ものったんかな。


この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。

『 わかる。ハシモト会長かく語りき』