『わかる』ハシモト会長かく語りき

第27話  証言「こいつに端から端まで握ったってや」

松本正記
ハシモト産業株式会社
東京営業所 部長

社長とは子どもの頃から一緒に食事に連れて行ってもらったり、家族のようにさせてもらっていました。
普通では入れないような高級店に、ゾロゾロと子どもたちでくっついて行ったものです。
今でも記憶に残っているのは、自宅が火事になってしまった時のこと。

もう、なんもなくなってしまって 母親と二人暮らし、火災で焼け落ちた自宅を前に、中学二年生だった私は愕然としていました。
そんな時でした。「うちに引っ越してこい」って、社長が言ってくれたんです。
涙が出るくらい嬉しかったし、ありがたかった。

後で知ったんですが、本当は社長の兄弟の方が入る予定だったそうです。
それを、自分と母親のために、早めに明け渡して住まわせてくれたんです。
頭が上がりません。

高校を卒業して、自然の流れでハシモト産業にお世話になりました。
会社に入ってからもいろんな経験させてもらって、改めて、経営者としての偉大さを知りました。
社長は、若い人間とよく話をしますね。

可能性を常に期待している。
足を踏み込んで初めて知った世界、私が成長できたのも、社長がその一歩を踏み込ませてくれたからです。
東京勤務になってからも、社長は上京するたびに、美味しい店に連れて行ってくれます。
「お前、ちゃんと食ってるんか」って。

忘れられないのは、寿司屋の板さんに、「ここに並んでるネタ、こいつに端から端まで握ったってや」って。いつも、やることが豪快なんです。
私にとって、ほんまの親父さんですね。



この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。

『 わかる。ハシモト会長かく語りき』