『わかる』ハシモト会長かく語りき

第38話 証言「考えて 考えて 考えて・・・」

国清 敏誠
株式会社ウッド・ハウス 代表取締役

ほんまに、いろんなことがありました。
目を閉じると、走馬燈のように想い出が巡ってきます。
なかでも人生の転機となったのは、独立と、震災。

その時、一緒に新時代を切り開いてくれたのが、橋本社長でした。
靴業界に二十五年勤め、四十五歳の時、独立しようと会社を辞めたのです。
つくっては売れた時代だっただけに、次から次へとメーカーが生まれましてね。

どこの店も、店舗展開をしながら自社ブランドを売っていましたが、注文を集めることができれば、商売が成り立ったいい時代でした。
私は、そうした事業の拡大よりも、ものづくりがしたいと思っていたのです。

そんな時に出会ったのが橋本社長やハヤシゴの林社長で、同じ価値観を持っていた人たちが 自然とビジョン会に集まってきました。
橋本さんは、メーカーを辞めて、まず、イタリアへ渡られた。
フィレンツェの丘の上でぼさーっと座りながら、考えて、考えて、考え抜いた結果、紐屋をやろうと思ったそうです。

今、 紐でハシモト産業を超える会社はないと思いますね。
私が会社を辞めた時、モリトの甘利さんという方が「ものづくりをしなさい」と、後押ししてくださり「靴やるのには材料要るやろ。紐つくってる人やけど、材料もやってるで」と橋本社長を紹介してくれましてね。
そこから、事業をスタートすることができた のです。


この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。

『 わかる。ハシモト会長かく語りき』