クアトロガッツの革の旅「栃木レザーができるまで LEATHER TRIP IN TOCHIGI LEATHER」(3)

栃木レザー社は、化学薬品を使わずに植物のミモザの樹液に革をつけこむフルベジタブルタンニン鞣し、植物タンニン鞣しを専門としています。
昔ながらの手間のかかる鞣し技術で品質の良いヌメ革を作ることで、日本でも類をみない評価を得るようになりました。

クアトロガッツのメインとなる定番アイテムは栃木レザーを使用しています。実際にその栃木レザーがどんな風に作られているのでしょうか?

工場見学の案内を中心でしていただいたのが栃木レザーの現場の責任者のひとりである三柴さんです。男らしい堂々とした体軀で、人懐っこい笑顔と大きな声が印象的でした。栃木レザーの革の中にはミシバクロップという三柴さんの名前を冠する革もあります。

「ミシバクロップは厚くてオイルが多い自分が好きなタイプの革。ベルトなどに向いている。タンニンのヌメ革と油は相性がいいんです。」

「昔はエイジングという言葉はなかった。ヌメ革は昔は今とは違って使われているのは黒塗りの学生かばんだけだった。ハシモト会長から色んな提案をしていただきヌメ革の世界が広がった。クロム鞣しの革は買った時の使い始めがマックスで、使えばボロボロになってしまい長く使えて楽しめる革は少ない。」

タンニン鞣しのヌメ革は雨に弱い欠点はありますが、その特徴を生かしてうまく育てれば、使うほどに味が出て育つ革です。」

本物の革とはなんぞや。ハシモト会長かく語りき」

タンナーの仕事は革は重量があるため力のいる仕事です。学生からすぐにこの世界に入って10年以上になり、若い頃はやんちゃだったといいます。

「やっぱり、力仕事だからそうじゃないつとまらない部分もあるかもしれないですね。」

「雑誌の取材などでは栃木レザーのキレイなところばかり切り取って世の中に紹介されるけど、本当はそんなところばかりではない。実際に見ていただいて革はこういう風にしてできている。こういうものだということを伝えたい。」

「私たち栃木レザーの工場で隠すところはひとつもありません。すべて見せていただいて大丈夫です。つくり方がわかっても真似することはできません。できたとしても同じように仕上がることはありません。」

まずはじめに革の材料となるのは食肉の副産物である原皮です。
革の原皮の多くは食肉の多い欧米から腐らないように塩漬けにされて輸入されます。栃木レザーの入り口近くに原皮が積まれている場所があり、何種類かに分かれた原皮を用途に応じて使い分けます。

革の産地は原皮ではなく革が鞣された場所が産地となるので、原皮が北米でも日本で鞣されれば日本製の革となります。また原皮であれば輸入に関税がかかりません。

「灰色になっているのが北米の方から輸入してきた原皮になります。英語で雄牛をブルと呼び、雌牛をカウと呼びます。牛の種類いろいろあります。革によって肌目や厚みが違います。国内の原皮、黒毛であったり、ホルスタインも一部入っています。豚の原皮も少しあります。」

「北米と国内の違いは北米が厚みがある。国内で良い肉とされる霜降りのサシの多い肉は油が多い。革は仕上げに油を入れるのはよいけど、元からある油はきれいに一回落とすので、油が部分部分にあるような皮は下準備が大変になります。」栃木レザー三柴さん

「皮を鞣すとき、染色するときにでてくるのがタイコと呼ばれる樽でできた円形のドラムです。
このタイコでかき混ぜ、洗ったり、色を入れたり、ぐるぐる回す。」

「最初にこのタイコの中に先ほどの原皮を入れます。汚かったり、塩漬けになっていて、水分が少なくなっているので、それを元の状態に戻します。あとは洗剤と水入れて回して、1日かけて皮の汚れをとって、水分を補充して戻してあげる工程になります。」栃木レザー三柴さん

寒い2月であったのでタイコはじゃぶじゃぶ、ぐるぐると回りながら、1箇所開いた入り口からはき出された水から白い湯気が立ち昇っていました。タンナーの敷地内にはそれぞれの作業工程に分かれてタイコが何台も並ぶ建物が幾つかありました。

革は最初の工程で背割りされ半裁になります。

「毛がついた、一頭の状態でわが社では皮を輸入します。それを洗い、広げて、背骨部分に沿って切る。これが背割りという作業。鞣しの準備段階のスタート地点です。一頭の状態だととても重く、毛がついているととても滑る。大変な作業です。とても大きい革のためこれをすることで、この後の作業の効率が上がります。」栃木レザー遅澤さん

クアトロガッツスタッフの感想

「初めに見せていただいた、生き物の革が塩漬けにされているところ、皮を半裁にする時に使う包丁が研ぎすぎて半円形になっていたことが一番印象的でした。
繊維をつぶさないためにタイコを使わずに石灰につける脱毛の作業など、重量のある革という固くて重いものを下準備するおおぶりな作業が最後の繊細な仕上げの作業がつながっていること、ハシモト会長に聞いていたことが目で見て確認できました。」

クアトロガッツの革の旅
「栃木レザーができるまでLEATHER TRIP IN TOCHIGI LEATHER」