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『君の見る世界をなぞる』
8月21日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシ
ネマ渋谷、新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開
原案:ローラン・カンテ(『パリ 20 区、僕たちのクラス』)
監督:ロバン・カンピヨ(『BPM ビート・パー・ミニット』)
出演:エロワ・ポユ、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、エロディ・ブシェーズ、マクシム・スリヴィンスキー ほか
配給:樂舎
「君の見る世界をなぞる」公式サイト
上映劇場
今回は8月21日(金)から公開される『君の見る世界をなぞる』を紹介。
あらすじ
南仏の裕福な家庭で育った 16 歳のエンゾは、学校に馴染めず、建築現場で見習いとして働いている。
そこで出会ったウクライナ出身の青年ヴラドに憧れを抱き、惹かれていくが、彼は兵役のため戦争へと向かわなければならない。
満ち足りた生活を送る家族への反発、進むべき道のわからない将来への不安、そして親しい人が奪われる戦争の現実。自分の感情を制御できぬまま、エンゾが過ごす夏は、静かに形を変えていく・・・。

青春映画というと、キラキラした青春を思い浮かべるかもしれないけど『君の見る世界をなぞる』に映し出されるのは、もっと不安定で、行き場のない青春。
主人公は16歳のエンゾ。裕福な家庭に生まれ、何不自由なく育ってきたはずなのに、学校に自分の居場所を見つけられず、建築現場で見習いとして働き始める。何に向かって生きればいいのかわからない。自分がどこにいるのかもわからない。そんな青春特有の悶々とした感情や憤りが、画面いっぱいに溢れている。

そんな彼が建築現場で出会うのが、ウクライナからやってきた青年ヴラド。戦争という現実を背負いながら働くヴラドは、エンゾにとって、これまでの自分の世界には存在しなかった「生」のリアリティを持った存在だった。
ヴラドが徴兵を前にして「プーチンのせいで死にたくない」と語る一方、エンゾは彼を心配し、なんとか励まそうとする。しかし、その思いはなかなかうまく伝わらない。その不器用さがいかにも16歳らしい。そしてヴラドに対して抱く恋心もまた不器用だ。

劇中には、親子の関係について「親は心配して子供を従わせたくなるけど、そうなれば彼らの危うさが恋しくなる」という印象的なセリフがある。子どもを守りたい親と、守られることから逃れたい子ども。そのどちらにも言い分があるからこそ、胸に残る。
本作は第78回カンヌ国際映画祭「監督週間」のオープニング作品に選出された。柔らかな南フランスの光に包まれた映像とは裏腹に、フランスの教育制度、階級格差、移民、そして戦争という重いテーマが物語の底に流れている。

監督は『BPM ビート・パー・ミニット』でカンヌ国際映画祭グランプリを受賞したロバン・カンピヨ。『パリ20区、僕たちのクラス』でパルム・ドールを受賞したローラン・カンテが長年温めていた企画を、カンテの逝去後、盟友だったカンピヨが引き継ぎ完成させた。
エンゾを演じるのは、本作が俳優デビューとなる元競泳選手のエロワ・ポユ。作り込まれていない自然な佇まいが、迷い、憧れ、苛立ち、欲望……言葉にできない感情を抱える少年にぴったりだ。

世界は広い。でも、16歳の少年にとって、その世界はまだ自分の手には余るほど大きい。だから誰かに憧れ、近づこうとして、失敗する。その繰り返しのなかで、少しずつ「自分の世界」を見つけていく。
今作は、そんな少年のひと夏を描きながら、私たちが生きる不確かな世界そのものを静かに映し出している。
美しい。でも、ほろ苦い。
観終わったあと、エンゾが見つめていた世界を、今度は自分がなぞっているような、不思議な余韻が残る作品だなと思った。
仲谷暢之
大阪生まれ。吉本興業から発行していた「マンスリーよしもと」の編集・ライティングを経て、ライター、編集者、イベント作家として関西を中心に活動。
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