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『3670』
2026年9月25日(金)渋谷ホワイトシネクイント、10月9日(金)アップリンク京都、ほか順次拡大公開

監督 パク・ジュンホ
出演 キム・ヒョンモク、チョ・ユヒョン 他

3670公式サイト
上映劇場

今回は、9月25日(金)から公開される注目の映画『3670』を紹介。

【あらすじ】 北朝鮮から命がけで脱北したゲイの青年・チョルジュン。脱北者同士の強い絆に支えられながらも、自身がゲイであることを隠し、深い孤独を抱えて生きていた。
韓国社会にも脱北者コミュニティにも居場所を見出せずにいた彼は、やがてソウルの活気あるゲイコミュニティへ足を踏み入れ、人懐っこい青年ヨンジュンと出会う。彼との出会いをきっかけに、初めての仲間や繋がりを得て少しずつ世界を広げていくチョルジュンだったが・・・。

以前、紹介した『君と僕の5分』は、男子高校生が抱える同性への思いを甘酸っぱい“青春”として描いていました。
対する今作は、脱北者でありゲイでもあるという「二重のマイノリティ」として生きる20代の若者・チョルジュンの姿を通し、日常の葛藤や将来への不安、戸惑いを描き出しています。

観ていて何より引き込まれるのは、韓国の若い世代のゲイたちが過ごす「リアルな日常」の描写。初めてゲイバーやクラブの扉を開いた時の緊張感、高揚感、同世代の飲み会での空気感。観る人の世代によって刺さり方は様々でしょうが、20代の頃に誰もが一度は経験する“ゲイコミュニティあるある”や、当時の満足感・苦い後悔が鮮明に蘇ってくるはず。

登場人物たちのキャラクター造形も見事です。日本に置き換えてもこういう子“いるいる!”“いたいた!”と思わず頷いてしまうリアルさがあり、「あいつ、今はどうしてるかな」「あいつとは今もなんだかんだ付き合いが続いてるなぁ」と、見ながら友人や知人の顔が浮かんできました。

タイトルの数字の意味にも通じる同世代の飲み会、そこで繰り広げられる出会い系ゲーム、キラキラしたモテ系の誕生会、濃厚なクラブイベントといったコミュニティの“陽”の部分。その反面にある、普段の地味な生活、心に抱く嫉妬や劣等感、家族の問題といった“陰”の部分。その双方が誤魔化されることなく丁寧に描かれており、セリフの端々から醸し出されるリアルな韓国の空気感に「監督、わかってるなぁ」と唸らされます。

キャスト陣の演技も素晴らしく、純朴で垢抜けない状態から徐々にコミュニティで存在感を増していくチョルジュンを演じたチョ・ユヒョン、そして陽気を装いながらも不器用な愛しさを抱くヨンジュンを演じたキム・ヒョンモク、二人の繊細な表現力が作品に深い強度を与えています。

劇中で効果的に使われている『SHOW ME THE MONEY 10』sokodomoの「MERRY-GO-ROUND (feat. Zion.T, Wonstein)」も必聴!切なくも美しい歌詞が主人公たちの心象風景と見事にシンクロしており、観終わった後もヘビロテ必至の名曲。
二重の孤独を抱えた青年が自分自身の居場所を探す物語。ぜひ劇場で、彼らの熱量と痛みに触れてみてください。

仲谷暢之
大阪生まれ。吉本興業から発行していた「マンスリーよしもと」の編集・ライティングを経て、ライター、編集者、イベント作家として関西を中心に活動。


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