手塚治虫の描いたメッセージ

クアトロガッツでは毎年8月に手塚治虫作品とのコラボアイテムを発売させていただいています。『ブッダ』『火の鳥』『鉄腕アトム』に続いて今年は『アトムキャット』とコラボしています。子供の頃に触れた手塚作品『ブラックジャック』『三つ目がとおる』『ブッダ』などなど。どこに行っても手塚作品のマンガがありました。

手塚治虫ワールドコラボ特集

大人になってから知ったことなのですが手塚作品には実は「生命の尊厳」というテーマがあります。それは手塚治虫の少年時代の戦争体験が原点となっています。

今年は終戦77年となりました。戦争といえば子供の頃に見た『はだしのゲン』や『火垂るの墓』などのマンガやアニメの印象が強く残っています。小学校では夏休みに戦争の歴史を学ぶ平和登校というものがありましたが、一番楽しい夏休みに、戦争という悲惨な歴史を知った時のショックは今でも忘れることが出来ません。

手塚治虫の作品に込められたメッセージをご紹介させていただきます。手塚治虫の作品集である『手塚治虫が描いた戦後NIPPON上』の中で養老孟司の後書きの内容が印象的でした。

「作者の世代は戦後社会の中で、どのような価値観を持って生きるか、それを自分の人生の中で実践せざるを得なかった。手塚治虫の場合には、だからそれが作品の中に表現され続けたのである。」

「たとえば当時原爆は最大の脅威だったから、それが逆に平和利用という「夢」を支え、それが鉄腕アトムとウランちゃんになった。」

養老孟司『手塚治虫が描いた戦後NIPPON上』の後書きより

「終始一貫して僕が自分の漫画の中で描こうとしてきたのは、次の大きな主張です。命を大事にしよう!

「僕は大きな戦争を、少年時代に体験してきました。だからこそ、生きているというありがたさ、生きていることの尊さを、みなさんに訴えたいのです。」

手塚治虫『手塚治虫漫画40年』より

「僕が、アニメーション映画に力を注いできたのも、一つには、この軍国主義による映画の効用を逆手にとって、夢や希望に目を輝かせることのできる子どもたちに育ってもらいたいからなのです。」

手塚治虫『ガラスの地球を救え』「僕は戦争を忘れない」より

「子どもに生きるということの喜びと、大切さ、そして生命の尊厳、これを教えるほかないと思うのです。」

手塚治虫『手塚治虫講演集』「未来人へのメッセージ」

なんとしてでも、地球を死の惑星にはしたくない。未来に向かって、地球上のすべての生物との共存をめざし、むしろこれからが、人類のほんとうの”あけぼの”なのかもしれないと思うのです。

手塚治虫『ガラスの地球を救え』

「手塚が小さい頃から、生き物たちの中で自分や人間は暮らしているんだという考えがあったので、人間以外の地球上の存在に対して、自分たちより相当優れているんじゃないか。という感覚をもっていたと思うんですよね。」

「命を次につないでいくことが自分たちの一番のミッションなんじゃないかということに、多分一番最初に気がついているんじゃないかな。
だから手塚マンガの中で”いかに人間がめんどくさいことをしているか、生き物から学ぶことがたくさんありますよ”というのをまず伝えたいんだと思うんですよね。

手塚るみ子手塚るみ子さんが語る アトムキャットと鉄腕アトムの魅力クアトロガッツ公式サイトより

日本の誇るべき文化「マンガ」

未来が予測不能な時代だとよくいわれますが、予測以前に私たちには命をつなぎ、争いのない平和で幸せを実現できる世界を未来に引き継ぐという一番の目的があります。戦争や犯罪のニュースを見聞きするとそのことが蔑ろにされ、二番手三番手にされているところに不幸の原因があるように思えます。

手塚作品は繰り返し「一番大切なこと」をテーマとして私たちに伝えようとしてきたことがわかります。『ブッダ』ではすべての生命の尊厳の平等性を若き日のブッダの姿を通して描き、『火の鳥』では永遠の生命を追い求める人々の姿を通して、生命を正しく生きることの大切さを問います。

手塚作品は現実の世相を作品に映し出しながら、マンガを通じて人々を楽しませると共に、鋭い視点をもって警鐘を鳴らしています。

それは現在だけを見て未来を議論や予測をしている多くの人に対して、手塚治虫が未来を見据えて、そのために今どうすべきかを考え行動していたからに違いないと思うのです。手塚治虫が逝去した際の朝日新聞の社説にこんな文章が掲載されていたそうです。

「なぜ外国の人はこれまで漫画を読まずにいたのだろうか。答えの一つは、彼らの国には手塚治虫がいなかったからだ。」

社説『朝日新聞』

日本の誇るべき文化「マンガ」。それはたった一人の偉大なイノベーターの存在から始まりました。偉大な変革もはじまりはたった一人の偉大な一歩から始まります。マンガの世界に限らず、これからの未来にも第二、第三の手塚治虫が生まれるに違いありません。是非、手塚作品に触れてみてください。

手塚治虫『アトムキャット』×小さいふ。

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※手塚治虫の「塚」の字は、正しくは旧字体(塚にヽのある字)となりま