「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」11月23日(水・祝)公開 © 2022 Disney. All Rights Reserved.
「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」
豊かな国アヴァロニアのエネルギー源である植物が絶滅の危機を迎え、世界は崩壊へと向かう。 この危機を救えるのは、偉大な冒険家の父へのコンプレックスから冒険嫌いとなった農夫サーチャーただ一人。 サーチャーは愛する家族とともに、地底に広がる”もうひとつの世界“へ足を踏み入れる。 謎に満ちた冒険の先で、サーチャーたちを待ち受けていた世界を揺るがす秘密とは・・・。 ディズニー史上最も驚愕のラスト─この結末が、”あなたの世界“も変える!
監督/ドン・ホール 共同監督・脚本/クイ・グエン 声の出演 サーチャー/ジェイク・ギレンホール:原田泰造 イーサン/ジャブーキー・ヤング:鈴木福 イェーガー/デニス・クエイド・大塚明夫 メリディアン/ガブリエル・ユニオン:松岡依都美 カリスト/ルーシー・リュー:沢海陽子
「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」 公式HP 劇場情報
「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」 11月23日(水・祝)から公開されるディズニー・アニメーション最新作「ストレンジ・ワールド もうひとつの世界」を前情報なく見たら驚いた。
ストーリーは、文明として豊かな国・アヴァロニアのエネルギー源である植物“パンド”がある日、絶滅の危機を迎え、国は崩壊へのカウントダウンへ・・・。 が、この危機を救えるのは、偉大な冒険家だった父へのコンプレックスから冒険嫌いとなり、今は農夫として暮らしているサーチャーだった。
大統領のカリストから直々の使命を受け、彼は原因究明の旅に出る。が、なぜか息子のイーサン、妻のメリディアン、さらに愛犬レジェンドまでが探査機に乗り込んで、地底に広がるもうひとつの世界へと足を踏み入れることに。そこは想像を絶するクリーチャーたちが暮らす不思議な世界だった!
毎回、ディズニーアニメには、よくこんな話を考えられるなぁと感心するんですが、今作も冒険家の父イェーガー、あるきっかけで農夫となった息子サーチャー、そして祖父譲りの好奇心と冒険心溢れる彼の息子イーサンの親子三代の関係性の話なのか、まるで「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」のような活劇ものが繰り広げられると思ったら、最終的に“あの伝説”につながっているのか!それで“あの映画”を想起させたのか!と活劇の体裁を取りつつ意外なストーリーに繋がっていき、しかもディズニーのテイストはしっかり残しているストーリー展開の巧さと奥深さに感嘆しました。話も決して古臭くなく、しっかり“今”も描いており、その“今”がなんだったかと言うと「多様性」だった。
まずアヴァロニアという国がオーストラリアやシンガポールのような多民族文化の面白さと混沌を浮かび上がらせている点。そして主人公、サーチャーは白人で奥さんが黒人だということ。しかも互いにベタ惚れで息子の前でイチャコラしまくり。
昨今の実写作品ではごく当たり前になってきてるけれど、ディズニーアニメではなかなかに珍しい(特にキスシーンを描いている部分が)。
それこそ大昔、1967年に公開されたシドニー・ポワチエ、スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘプバーンという名優たちが出演した映画「招かれざる客」は、ある男性と結婚を約束した白人女性が、両親に紹介したら、その彼は黒人だったことで騒動が起こる内容で、根強く残る人種差別の問題を取り上げており、肌の色の違う男女が結婚するなんて許されないという考えが当時は当然のようにあったし、そのことはいつまでもネタになるらしく2000年代に入っても「エデンより彼方に」「ゲス・フー/招かれざる恋人」「ラビング 愛という名前のふたり」「ア・ユナイテッド・キングダム」などでも描かれていたくらいだからディズニーアニメで描かれることはとても素晴らしいなと思う。
そしてもうひとつがサーチャーの息子イーサンがゲイであるということを当たり前のように両親が受け入れてるということ。
2017年に公開された実写版「美女と野獣」でガストンの子分、ル・フウがディズニー映画史上初めてLGBTキャラクターとして登場し(監督が認めている。ちなみにマッチョの塊のような悪役ガストンを演じたルーク・エヴァンズはカムアウトしている俳優)、それまでグレーゾーン的な匂わせ、なんとなく想起させる表現はあったものの、はっきりとは描かれなかった。が、徐々にLGBTが可視化されるようになり、2017年、ディズニーチャンネルで放送された「アンディ・マック」には10代の同性愛者キャラ、サイラスが登場し(演じたジョシュア・ラッシュもカムアウトしている)、2020年にはDisney+で「殻を破る」で、ディズニー初のゲイが主人公となった短編アニメ「殻を破る」が配信され、同年劇場公開されたアニメ「2分の1の魔法」でもレズビアンの警察官が登場し、彼女のパートナーと娘とのシーンが描かれたりしている(ちなみに声を担当したリナ・ウェイスはオープンリーのレズビアンの女優)。
が、今年公開された「バズ・ライトイヤー」では同性同士のキスシーンがあるからと、上映禁止の判断を下した国が出たり、「私ときどきレッサーパンダ」では同性同士の恋愛表現をディズニー自身がカットしたりもしている(ピクサー内部から強い反発と抗議が出された)。ゆえに今の時代に鑑みて可視化されたからと言っても、まだまだ時代は寛容になっているようでいて、不寛容な部分も残っている。 とはいえ、ゲイの、しかも10代のメインキャラクターが登場する今作を素直に喜びたい。しかもゲイだからと言って、いわゆるステレオタイプなカリカチュアされた演技がないのがさらに嬉しい。
親子三代の理解と成長物語に多様性、環境問題まで融合させた“今”のディズニーアニメ、話自体もあっと驚く展開が待っているので是非劇場で見てほしい。
仲谷暢之
大阪生まれ。吉本興業から発行していた「マンスリーよしもと」の編集・ライティングを経て、ライター、編集者、イベント作家として関西を中心に活動。