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「泣いたり、笑ったり」

南イタリアの港町ガエータを舞台に、対照的な2つの家族の父親同士の再婚が巻き起こすひと夏の大騒動。

■配給:ミモザフィルムズ
■12/2(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、シネマート新宿、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

監督:シモーネ・ゴーダノ 出演:アレッサンドロ・ガスマン、ジャスミン・トリンカ、ファブリツィオ・ベンティヴォッリオ、フィリッポ・シッキター

「泣いたり、笑ったり」 公式HP 劇場情報

シネ・リーブル梅田は12月16日(金)より全国順次公開中のイタリア映画「泣いたり、笑ったり」は、お互いに孫もいる初老男性が同性結婚をする顛末を描いたコメディ。

病院で知り合った画商のトニ、漁師のカルロ。それは運命の出会いとなり、結婚を決意することに。が、長らく男女ともに浮名を流し、人生を謳歌してきたトニには異母娘が二人、さらに孫が一人。 方やカルロには、漁師の仕事を継いでいるサンドロと、年の離れたアダムという二人の息子がおり、サンドロには一人息子と、妻のお腹の中に二人目の子を宿している。

南イタリアの港町ガエータにある、トニの別荘に集まる両家の面々。彼は娘たちや妹たちに男性と結婚することを告げ賛否両論。カルロもカルロでまだ息子たちに言い出せない状態。が、あるきっかけで結婚することがサンドロにわかることに。パニック状態の息子に説得するも理解すらしてもらえない。そんな時、同じく父トニの結婚を反対する娘ペネロペは、サンドロに二人の仲を割くために手を組むことを持ちかけるが・・・。

人生を謳歌してきたトニの自由奔放なライフスタイルに昔から振り回され、愛情のひとかけらも受けていなかったことを長年抱き続けていたペネロペにとっては、いい歳して結婚することも受け入れられないし、ましてやそれが男性ということはさらに理解しがたい。だからこそ許すまじ!と、あれこれ画策するものの、結局裏目に出るプロセスはおかしいけど、と、同時に彼女の積年した寂しさも浮かび上がらせてくる脚本の塩梅がいい。さらには一緒に手を組んでいたサンドロともおかしなことになっていく展開も。

カルロは、亡くした妻を今も愛しているものの、これからをどう生きようかと思っていた時に出会ったのがトニだった。漁師として真面目に生きてきた彼にとっては、自分に自由をくれた男性と一緒になるということは理屈ではなく、必然だったと理解しているものの、やはり愛する息子たちにどう伝えればいいのか、その“術”がわからない。

トニはドライ、カルロはウェット、だけど二人ともイタリア人らしいむき出しの愛を持ってる。それは娘のペネロペとサンドラたちもそうで、それゆえにそれぞれが“憎し愛し”の行動に出てしまう様が滑稽であり、共感もしてしまう。

今作を見て思い出したのが、1988年に公開されたエットーレ・スコラ監督の「マカロニ」という映画。かつてアメリカ兵士としてイタリアに駐在していた男が40年を経て、商用でナポリへ。そこに、かつて現地で愛した女性の兄が訪ねてきたことから、意外な事実を知ることになるという話で、ジャック・レモンとマルチェロ・マストロヤンニという、アメリカとイタリアを代表する二大名優の演技合戦を楽しめるのだけど、今作もむき出しのイタリア人の愛、そして家族というものをいかに大事にするかというのが嫌という程わからせてくれる作品だった。

昔、イタリア人は“多情で、純情で、無責任で、狡い”気質だと友人が言ってた。トニはまさにそれを具現化したような人間で、結果、カルロすら振り回してエライことになるけれど、結局は成るように成っていく。ただ、しっかり同性愛者への偏見から生じる家族、親子、格差、放任育児など現代社会にある数々の問題にも向き合っているはさすが。

あと、カルロの徐々に明らかになるイケオジぶり、そして息子のサンドラの粗野だけど初めから醸し出してるイケメンぶりは、この映画のもう一つの魅力でもあります。

仲谷暢之
大阪生まれ。吉本興業から発行していた「マンスリーよしもと」の編集・ライティングを経て、ライター、編集者、イベント作家として関西を中心に活動。


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