(C) 2023「ひみつのなっちゃん。」製作委員会

「ひみつのなっちゃん。」

2023年1月13日(金)より 新宿ピカデリー他全国ロードショー
2023年1月6日(金)より 愛知・岐阜先行ロードショー

出演:滝藤賢一 渡部秀 前野朋哉 / 松原智恵子
監督:田中和次朗
配給:ラビットハウス 丸壱動画

ひみつのなっちゃん公式HP


 今回は、来年1月13日(金)から公開される「ひみつのなっちゃん」をご紹介。
ある日、元ドラァグクイーンのなっちゃんが急死したと連絡を受けた後輩クイーンのバージン。
 駆けつけた病院にはクイーン仲間のモリリンが先にいて、なっちゃんが経営していたバーで働いていたこともあり、これからのことを考えあぐねて泣き倒し状態。さらに、自身のセクシャリティを家族に秘密にしていたなっちゃんの“東京での諸々”をどうするかを最優先しなければ、家族が来てバレてしまうかもと・・・。そこでもうひとりの後輩クイーン、ズブ子を巻き込み、“その”痕跡を消すために自宅に忍び込んだはいいけれど、運悪くなっちゃんの母親と鉢合わせ!なんとかその場を切り抜けたものの、彼女から故郷、岐阜県郡上市での葬儀にぜひ参列してほしいと頼まれ、3人はそれぞれに複雑な気持ちを抱えながら車で向かうことになるのだけど・・・。

 とうとう日本でもドラァグクイーンがメインキャラとなる映画が作られたかぁと、感慨深い。話の展開は、1995年に公開されたオーストラリアのドラァグクイーン映画「プリシラ」や、その映画からリスペクトを受け、アメリカで製作、公開された「3人のエンジェル」をかなり意識した作りになっていて、バージン役を演じる滝藤賢一も「プリシラ」のテレンス・スタンプが演じたバーナデットというキャラにもの凄く寄せてるし、車で目的地を目指す、途中でゲイならではの差別や、お転婆騒動もあるってのは「プリシラ」「3人のエンジェル」をしっかり踏襲していたり、予算のせいか既存曲が使えてないという、ドラァグクイーンものにしては致命傷的なこと“などなど”、ツッコミたくなるところは山ほどあるんだけど、それでもこの映画を愛したいのは、やはり邦画でドラァグクイーンをメインに描いたという部分、それもセンシティブに描いているのは及第点を差し上げたいです。

 今から30年以上前に、ニューハーフ(現在セクシャルマイノリティの表現の仕方にこの呼び名にも変化があるけれど、今回はこの表現で書かせていただきます)ブームが起こり、いろんなテレビ番組に出たおしていた時期があり、その流れに乗っかったのか、片岡鶴太郎主演でニューハーフがメインキャラで登場する「Mr.レディー 夜明けのシンデレラ」という映画が作られたんだけど、時代というのは残酷で、今見るとよくこんなノリで作ったよねと思うくらいニューハーフと呼ばれる人々の描き方がステレオタイプな、キワモノ的な扱いをされていて残念至極なデキになってた。

 今作もある意味、そういったドラァグクイーンの認知度が広く知られてきた中で、企画され、作られた要素も多分にあると思うのだけど、ちゃんとドラァグクイーン監修として現役ドラァグクイーンのエスムラルダが監修としてサポートしていたのは大きいと思う。

 主演3人はドラァグクイーンとして頑張ってたし、三者三様の抱えてる問題や、生き方をしっかり浮かび上がらせてくれて魅力的。特に前野朋哉演じるズブ子は、東京や大阪で活躍しているドラァグクイーン、ベビー・ヴァギーのキャラやメイクをしっかりモデルにしているのが面白かった。

 なっちゃん役には、なんとカンニング竹山、なっちゃんの母親役には松原智恵子の飄々としたキャラ、本田博太郎が「北京原人 Who are you?」の原人役以来?の怪演ぶり、来年から「純烈」のメンバーになる岩永洋昭のなんとも言えない展開キャラ、名古屋のドラァグクイーン、アンジェリカの唐突な出演など脇の人たちにも注目してほしいです。


仲谷暢之
大阪生まれ。吉本興業から発行していた「マンスリーよしもと」の編集・ライティングを経て、ライター、編集者、イベント作家として関西を中心に活動。


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