「ボクらのホームパーティー」

東京の片隅でホームパーティーが開かれた。そこには、とある縁で集まった7人のゲイたち。主催者カップルの彰人と靖、大学生の智也、ゲイバーの店子・将一、ゲイクラブの店員 ・直樹と友達の正志、そして写真家の健一。楽しいはずのパーティーは少しずつ様子を変え、各々が閉じ込めていた悩みや気持ちが徐々に表面化していく…。

上映劇場情報

【大阪】
シアターセブン
2023年1月21日㊏~1月27日㊎ ・1/21(土)/22(日) 18:00 ・1/23(月)~27(金) 18:50

【名古屋】
シネマスコーレ
2023年2~3月予定

監督/川野邉修一
出演/橋詰高志、景山慶一、松本亮、横路博、卯ノ原圭吾、窪田翔、井之浦亮介

ボクらのホームパーティ公式HP

すでに東京では公開が済みましたが、これから大阪と名古屋で公開される日本映画「ボクらのホームパーティー」を紹介。
ここ数年はコロナ禍もあって、なかなかホームパーティーというのを開いていないけれど、それこそ20代、30代の頃は、なんだかんだとテーマを掲げてパーティーなんてことを企画したり、お招きしたり、お呼ばれしたりしたものだった。
で、今作もそういうゲイたちが集まったホームパーティーで繰り広げられるお話。

ある夏の日、彰人と靖のカップル宅で行われるパーティーに、ゲイバーのスタッフの将一、彼の店に来たお客で初心者ゲイの智也、クラブスタッフの直樹と、そんな彼と一夜を共にした正志、そして靖の友人の健一が参加する。美味しい料理と美味しいお酒があれば、この世は天国、芳村真理です(もう知らないよねこのフレーズ)の勢いもあって、それぞれが抱えてる闇の扉が開く・・・。

ゲイとホームパーティーといえば「真夜中のパーティー」という1968年にオフブロードウェイで上演され、1970年に映画化され、2020年にリメイクされた(Netflixで「ボーイズ・イン・ザ・バンド」という原題で配信中)、ゲイにとってはとても重要な作品があり、映画は、ハリウッド映画において同性愛を真正面から描いた初めての作品と言われている。

ゲイの友人、ハロルドのために誕生パーティーを開いた主人公マイケルのアパートに集まったゲイ友たちを中心に、ひょんなことから繰り広げることになった“残酷”なゲームから、それぞれが抱えている問題が浮かび上がって行くという物語だけど、ストーリーラインとしては「ボクらのホームパーティー」は同じ。だけど、そこは日本が舞台、しかも東京で暮らすゲイたち!が集まっているとなれば・・・。

それぞれのキャラクターがいいんですよ。“ほどほど”で。本来ならここに虚栄バリバリのゲイを放り込むことによってパーティークラッシャー化するっていう手もあったかと思うんですが、そうなると本来描きたかったことが、とっちらかっちゃう可能性も無きにしもあらずだったはずだし。顔もイケメンばっかり揃えちゃったら、見ている方は「あ、絵空事ですよね」みたいに構え感じちゃうのを「あ、こういう子たちいるよね〜」「あ、この子イケる〜」なんて思える人たちを揃えていて、わかっているキャスティングで感心。

さらに彰人はメンヘラ気味、靖は彼氏がいるけどもっと外で遊んでみたい。将一は店子気質が抜けず八方美人の恋愛下手。智也はゲイ初心者だけど理想と妄想が勝ちすぎて、実は一番ドロドロしてる。直樹は今が楽しければいいタイプ、正志は恋愛気質だけど依存しすぎるタイプ。健一は自分が男前だとわかっている女猫タイプ(「真夜中のパーティー」のラリーとの共通点があるので見比べるといいかも)と、自分に置き換えられるようにもなってる。

そしてパーティーの食卓に並ぶ料理や、アルコールもこれまた“ほどほど”でいいんです。メインがパエリヤ!後はブルスケッタやカプレーゼと、ゲイが集まるパーティーなら、これ出しときゃ「私、料理できるので(大門未知子の言い方で)」アピールできるメニュー。それに缶ビールと缶チュウハイに鏡月!なんですよ。ここで「シャンパーニュよ〜」なんて言いながら、シュワシュワもんで乾杯し始めだと、何かハレの日のパーティーという風に設定されちゃうのを、あくまでも普段着のホームパーティーになっているのもいい。

東京で暮らす、等身大のゲイたちの日常。ちょっとこんなことがあったけど、それでも僕らはゲイとして生きていく。この機会でまた繋がる人は繋がるし、離れていく人はいくだろうというようなことを感じさせてくれる映画。
でもこれを見てるとやっぱりパーティーをしたくなってしまう。でも大阪に暮らす自分はもっとイケズなパーティーになってしまうかもですが・・・。

 



仲谷暢之
大阪生まれ。吉本興業から発行していた「マンスリーよしもと」の編集・ライティングを経て、ライター、編集者、イベント作家として関西を中心に活動。


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