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「ボディビルダー」

12月19日(金)シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷 ほか全国順次公開

監督・脚本:イライジャ・バイナム『HOT SUMMER NIGHTS/ホット・サマー・ナイツ』

出演:ジョナサン・メジャース『クリード 過去の逆襲』、ヘイリー・ベネット『Swallow/スワロウ』、マイク・オハーン

2023年/アメリカ/英語/123分/シネスコ/カラー/5.1ch/PG-12/原題:Magazine Dreams/日本語字幕:額賀深雪/字幕監修:山岸秀匡/配給:トランスフォーマー

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今回は12月19日(金)から公開される『ボディビルダー』を紹介。

あらすじ

アメリカの片田舎で病気の祖父を介護しながら暮らす青年キリアン・マドックス。
低収入で友人も恋人もおらず孤独な毎日を送っているが、彼には揺るぎない<夢>があった。それは一流ボディビルダーになって、フィットネス雑誌の表紙を飾ること。

人生のすべてを捧げて日々過酷なトレーニングと食事制限に打ち込むものの、徐々に身体は悲鳴をあげ始め、社会の不条理と孤立が彼の精神を蝕ばみ、ある事件を機に、純粋な夢は狂気へと変貌する・・・。

昔、ジムに行き始めた時にムキムキのインストラクターに言われたことが今も忘れられない。

「ひたすら体を鍛えるじゃないですか、数ヶ月するとその効果がある程度出てくる。そしたら人は二つの欲望が出てくるんです。それでどちらかを選ぶんです。一つは人に見せたくなる身体にしたい、もう一つはただ健康になることを信じてジムに通う。仲谷さんはどちらを希望します?」

自分は迷わず後者を選んだ。そのチョイスにインストラクターの目の輝きがサッと消えたような気がした。

とはいえ前者を選んでいたらどうなっていたか。たらればは何も生まないことは百も承知だけど、見せたくなる身体作りの方を選んでいたら、きっと承認欲求の塊になって、自撮りばかりしながらInstagramなどのSNSにアップしたりしていたかも。

かつてボディビルにのめり込む友人がいた。クラブでのゲイイベントでGOGO BOYとして活躍もしていた。彼は食事に誘っても食べるものが決まっているからと断っていたし、一緒に遊びに行ってもこれから夜のトレーニングがあるからとさっさと切り上げて帰ったり、常に他人の目を意識したり、自分の体型についてどう思う?という質問ぜめがあったりして結局、疎遠になった。

いつの間にかクラブイベントにも出なくなり、彼のことは忘れていた。ある時に、ふと思い出し、別の友人に「そういえば彼はどうしてる?」と聞くと、一時は身体を壊したものの、復帰後は50代後半になった今も身体を鍛え、SNSにその姿をアップしているとのこと。

教えてもらったSNSアカウントを覗きにいったら、かつてのスパークルな輝きは失われていたけれど、いぶし銀のような円熟味漂う肉体をアップしていた。その活路の見出し方に否定はしないけれど、個人的にはその執念に若干の怖さを覚えた。

そんな彼のことが時折頭に浮かびながら見た今作だったけど、以前紹介した『愛はステロイド』や美に執着した女性を描いた『サブスタンス』に通じる沼にハマりきった主人公・キリアンの行き切り方に鳥肌が立つのを覚え、やがて、憧れのボディビルダーとの間に“あること”が起こり、さらに負の連鎖が続くと『タクシードライバー』や『ジョーカー』のようなキャラクターに彼は変貌する。う〜ん彼にとってはこういう導き方しかなかったのか・・・身体を鍛えているゲイの方たちに見てもらって意見を聞きたくなる作品だった。

仲谷暢之
大阪生まれ。吉本興業から発行していた「マンスリーよしもと」の編集・ライティングを経て、ライター、編集者、イベント作家として関西を中心に活動。


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