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「セバスチャン」

2026年1月9日(金)から新宿シネマート / 横浜シネマ・ジャック&ベティ / テアトル梅田、2026年1月10日(土)からシアター・イメージフォーラム他にて全国縦断ロードショー。

ルーアリ・モリカ ヒフトゥ・カセム イングヴァル・シーグルズソン ジョナサン・ハイド リーン・ベスト
監督・脚本・編集 : ミッコ・マケラ 撮影 : イッカ・サルミネン 共同編集:アルットゥ・サルミ BFE 録音:エノス・デジャルダン 音楽:イラリ・ヘイニラ

配給・宣伝 : リアリーライクフィルムズ

セバスチャン公式サイト
劇場情報

あらすじ

ロンドンに住み、将来を嘱望されている若い作家志望のマックス。彼はデビュー作となる長編小説をリアルなものとするために「セバスチャン」という名前で男性相手のセックスワークの世界に足を踏み入れる。職業を通して体験する未知の世界。様々なクライアントと接していくうちに、マックスとセバスチャンの境界線を次第に見失っていく。

小説を書くために、リサーチとして人と会ったり、その世界に潜入し、体験してリアルを言葉の中に持ち込む。
自分もあるテーマの記事を書くためにその世界の人にインタビューをしたり、その世界を体験したことによって芝居の脚本を書いたりもした。
やはり想像や資料、ネットで検索するだけで書くのと、見たり聞いたり、体験したりして書くこととはリアリティが違う。

つい最近もある映画の脚本協力のために、その事象の当事者にインタビューし、その現場を訪れて、ネットやニュース記事を読むだけではわからなかったことを次々と知感し、その情報と真実のズレの深さに怖さを感じた。

本を出すということは、“今”なかなか難しい。ベテランでもそうなのに、新人ともなるとさらにハードルが高くなる。主人公マックスは少年時代から文章を書くことが好きで少年時代には賞も受賞した。現在は出版社でバイトしながら、かつて書いた短編の素晴らしさを評価され出版社から長編小説を書いてみないかと言われ、せっせと書いている。その内容はセックスワーカーとその客とのやりとりをメインとしたもの。かつてセックスワーカーと話した時に感じた仕事への誇りに魅了されたからだという。が、実際は、マックス自身がセックスワーカーの世界に身を投じて、そこでやりとりしたことを書いている。

映画の中でマックスの職場の友人が「味わったことのある人しか書けないと思う」と言ってるがまさにその通り。味わっているからこそ書ける状況の細かさ、相手の容姿や年齢、クセに編集者は魅了されている。が、読者でもある編集者は読み進めるうちにもっともっとと、アドバイスしてくるが、マックスは出会った客に対しての深淵と自分の感情の変化を文章に表現したいと思う。

その、表現したいことと最終的な着地点の見出し方の、お互いのズレの部分に個人的に共感した。知らない世界を覗き見る好奇心と興奮は編集者が代弁する読者側の要求としては理解できるが、書き手となると、そればかりだとついぞ書くことに飽きる事もあるし、書いているうちに違う着地点を見つけることもある。そのバランスをいかにうまく妥協したりしなかったりできるかがある意味“プロ”だと思っている。

25歳のマックスはそこがまだできないでいる。なんせ、実際にその世界に身を投じて、“オイシイ”ことも、危険なことも自業自得なことも経験しているから、書く内容をコントロールしないでほしいと切に願うのだ。自分のために“取っておく”ことがまだできないのだ。とはいえ、最終的にはマックスは成長する。その成長は最後のセリフでわかる。

仲谷暢之
大阪生まれ。吉本興業から発行していた「マンスリーよしもと」の編集・ライティングを経て、ライター、編集者、イベント作家として関西を中心に活動。


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