『わかる』ハシモト会長かく語りき

第6話 表の人生やろうや 「こんなんやってられん」

「自分の家の畳の上で寝たい・・・」

子供の頃からそう願って、実現するのに三十五年かかりました。
自分で家を買う時は、大阪市内だったら百坪超、大阪府内では五百坪超ゃないと、絶対に住まんと決めてたんです。
なんでかいうたら答えは簡単で、昔、広い家に住んでいたから。

そんなこと言うから人にアホにされるんですが、兄弟に家買(こ)うて住まわせて,自分の家は最後に買うたんです。
三つ子の魂百までといいますが、ほんまにその時の環境は私の人格を形成するうえで、大きく影響してると思いますね。

そんな私の人生の転機は、三十五歳の春でした。
結婚して、私はある靴メーカーに勤めたんです。
裁断ばっかりやってましたがな。百貨店の下回りとね。当時の給料は、一万八千円くらい。

安うて、四千円の家賃の四畳半のアパートにしか住めへんのです。
いつも、金はない。
おもろうない。

「こんなん、アホなことやってられるか。

よし、え、え、わ、殺されてもいい。
わしは、おもろい人生を歩む
そう決意したんです。


この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。

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