『わかる』ハシモト会長かく語りき

第7話  表の人生やろうや「月給泥棒やないなら責任とってください」

こうして商品の仕入れができるようになった私は、テープ、ベルトなどの付属品に使いましてね。
これが大当たり。伊太利亜という店で使ってもらい、一気に伸びたのです。
ボタンにも使ったのですが、それによってボタン業界が表業界に入れたんです。

ボタン屋は、付属品やから裏からしか出入りができなかった。
それが、表から商売できるようになったんです。
「対等に商売できるようになった」と、随分、感謝されたものでした。

今、考えてみれば、店も持っとらん若造が東レに「商権くれ」なんて、売ってくれるはずがないですわ。今なら、よう言わんですわ。

その東レが、エクセーヌを出してから二十数年の間に、業績が少し落ち込んだ時期がありましてね。研究室、営業、開発のトップの方々が、わざわざうちにお見えになったのです。
「エクセーヌの業績がおもわしくなく。。。」
と切り出されたので、私は、こう、詰め寄ったのです。

「失礼ですが、皆さん、立派なお立場におられるようですが、この二十年間何をされていたんですか。月給泥棒してただけやないですか。
こんなにすばらしい技術を持っておきながら、二十年間、同じ商品をつくり続けて、何の変化もなかったやないですか。我々、商権もっとるもんに対して、責任とってください。違いますか?」


この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。

『 わかる。ハシモト会長かく語りき』