『わかる』ハシモト会長かく語りき

第20話 証言「悪い時は悪い ええ時はええ」

青木通
ハシモト産業株式会社
大阪本社 常務

大学四年の時、アルバイトでハシモト産業に入り、もう四十数年が経ちました。
一番古いんちゃいますか。
良い時代も、悪い時代も、社長とともに歩んできましたから、最も近くで見てきたひとりやと思います。

仕事の関係で私の親父と知り合いだったので、社長のことは子供の頃から知っていました。
会社を立ち上げた時に車を運転する人がおらなかったので、たまたまお手伝いしたのです。これが始まりですね。
入社当時、新人の私に六万円のお給料を出してくれはったんです。
その社長の心意気、今でも忘れません。

会社は海のものとも山のものともわからない状況でしたが、社長はどんな状況にも動じない。
踏まれても、踏まれても立ち上がるんです。
世の中が不況ムードでも、平然としてはりますね。
「悪い時は悪い、ええ時はええ」とね。

我々も良い時もありましたし、製造をストップしたこともありました。
そんな時でも、社長は、一言の愚痴もこぼさないんですよ。
バブルの頃、日本中が株だ、不動産だ、ゴルフの会員権だ、と目の色を変えて買いあさっていた時でも、社長は手を出さなかったですね。

軽はずみなうまい話には一切、乗らない。
我々は製造業ですから、汗水流して働いて、わずかな金額のものを扱っています。
バブルが崩壊しても会社が元気でいられるのは、そうした精神を貫いてきたからだと思うんです。


この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。

『 わかる。ハシモト会長かく語りき』