『わかる』ハシモト会長かく語りき

第22話「世間の本当の意見を聞いて、自分で考えろ」

橋本信一
ハシモト産業株式会社
大阪本社 部長

子供の頃、家で父親と過ごした記憶はほとんどないんです。
ただ、中学生くらいからだったか、父と母の両父母とともに、毎年温泉に連れて行ってもらいました。その印象だけは強いですね。

父親の生き方に触れるようになったのは、高校生時のアルバイトからでしょうか。
多少のことは理解していたつもりでしたけど、仕入れ先売り先の関係、他社との考え方の違い、ものづくりに対する姿勢、なんでこんなに在庫を持つのか 現場に入ることで、少しずつ親父の理念を感じていったように思います。

大学卒業してから、ファッションや配色の勉強のためにイタリアに三年、ビジネスするのに語学が必要だとアメリカに二年行かせてもらいました。
もともと中学の頃から絵が大好きで、油絵を習っていましてね。

親父も、独立する時のもうひとつの選択肢は写真家だったんですよ。
仏像が好きで、母親とのデートはお寺巡り。
会社経営していなかったら、写真家になっていたかもしれない。

「自分の息子は教育できない」と、親父は「世間の本当の意見を聞いて、自分で考えろ」といつも言います。

東京営業所におる同級生の太田や松本の方が腹を割って話ができるのかもしれない。
親子だと、感情が入って素直に聞けない部分があると思うんですね。だから、親父の友人である林社長や、長谷社長が親父代わりかな。


この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。

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