『わかる』ハシモト会長かく語りき

第31話 証言「全部あれば 使いやすいやろ」

証言 林 建次
株式会社 ハヤシゴ 代表取締役

日本の材料供給者は、受注発注といって在庫を持たないスタイルが当たり前で、今は、それが効率経営などと評価されている時代です。
仮に百色のサンプルがあったとしても、効率を求めれば、頻繁に出る数色くらいしかストックしないもの。

ハシモト産業には、百色のサンプル帳があり、その全色を在庫で揃えているんです。
全部あれば、工場で使う人、使いやすいやろ」 と言う橋本社長は、効率を求めるのではなく、材料をつくっている会社や、使う会社のことを考えて百色の種類を揃える。

サンプルを渡す時も、普通は小さく切った端切れですが、「どうせなら、一足つくれる分を持って帰れ」と、豪快です。
「天然の素材には必ず傷がある。でも、その部分は売れませんから、メーカーはだいたいほかしてしまう。ところが、橋本社長は「ええのだけ買って、悪いのが残ったら仕入れ先が困るやろ」と、全部を仕入れ、傷の使い方を考えるわけです。

それが、実際、ビジネスにつながっているからすごいんですね。
これまで捨てられていた材料が、橋本社長の手にかかると、生き返るんです。


この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。

『 わかる。ハシモト会長かく語りき』