『わかる』ハシモト会長かく語りき

第33話 証言「林さん、よう出したってくれたな。」

証言 林 建次
株式会社 ハヤシゴ 代表取締役

橋本社長のご長男の信一君がイタリアに留学 していた頃、私の子供がお世話になったんです

「六人いるうちの中一、小五、四年と三人を行かせたのですが、橋本社長に「えらいお世話なってすんません」ってお礼を言うと、「林さん、あんた子供をよう出したってくれたな。うちの 息子、いい経験させてもろうたわ」と、逆に感謝されたのです。

四十日間も、食事から寝るまで、小さな三人の世話は大変やったと思うんです。
この時の海外経験がきっかけとなり、五番目の息子がファッション関係の仕事に興味を持ち、うちの会社に入ってがんばってくれているんです。
信一君は、その息子にとって、今でも兄貴分のような存在ですわ。

そんな信一君が結婚することになり、縁あって、私は仲人を頼まれたんでお嫁さんになる彼女が、
私の故郷でもある淡路島の学校の校長先生の娘さんやったんで、
ハシモト産業の青木常務と先方に挨拶に行くことにしたんです。

「その時、「林さん、ひとつだけ頼みがあるねん」 と改まるので、聞いてみると、
「はだかで来てほしいんや。あの子ら若い夫婦に苦労させてほしいねん。ぼくからのお願いはこれだけや」と。「息子の教育だけはできへん」と、口癖のように言っていた橋本社長のこの言葉は、私の心にしみましたね。


この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。

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