こんばんは、WEB担当のくすどです。
今日の小さいふ。は「薄紫色の余韻」。
ぼくの好きな本の中に中島らもさんの「今夜すべてのバーで」という本があります。

アルコール中毒になってしまった主人公の入院生活を描いた本なのですが、朦朧とする意識の中で見た夢の中でネクタール(神の酒)というものが出てきます。

口の中で冷たい玉がはじけるような感覚があった。
つぎに口腔内から鼻先へ、花の精のような芳香がすっと抜けて出た。
感じるか感じないかというぐらいの、ごくほのかな甘みが舌先にあり、上質の果実のような淡い酸味も感じられる。そしてその味わいの重なりの間に、なにやら未知のコク、いまだ名づけられたことのないであろう軽やかな味覚が潜んでいた。
飲みくだすと、その液体は涼しい流れのままに喉を降りていき、口の中には淡い紫色の余韻だけがかすかに残り、やがて消えた。
(中島らも 今夜すべてのバーで)

この薄紫で透き通ったエナメルの小さいふを見た時に、この一文が浮かびました。

もしお休みで予定が無い日があって、ご興味を持っていただけた方は文庫版も出ていますので、ぜひ読んでみてください。
文庫本をサカナにちょっと一杯
薄紫色の余韻をお供にいかがでしょう。
そんなお休みも、ステキかもしれません。

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今日の小さいふ。はこちら
小さい財布の小さいふ。