『わかる』ハシモト会長かく語りき

第1話 三つ子の魂百まで 「アホな英雄でええ」

大阪は旭区千林、十八代続いた家に生まれた
私は、お屋敷みたいな大きな家で育ちましてね。
母親に育てられた記憶はあまりないのですがうちのおばあさんが、昔の河内の言葉でこんなこと、よう、言うとりました。

「馬鹿はカカ(嫁はん)を大事にする。

馬鹿は無駄なことをしない。
カカを大事にするアホな英雄でええ。

賢いやつはいろんな世界を歩き、いろんなことをするわけですが、馬鹿なやつは真面目に働き嫁はんを大事にするとね。
うちの親父は頭が切れ過ぎて、どないもしゃあないわけです。
政治運動しとりましたから、ほとんど家にはおりませんでした。

母親は苦労しましたなぁ。

ある時、大臣の書記として東京へ出ていた親父が、横浜で列車転覆の大事故に遭い、朝日新聞のトップ記事の写真に出てましてね。
入院先をつきとめ、「大阪へ帰れ、お前は長男だから」と、親は説得したそうですが、ますます政治運動にのめり込んでいった。

政治運動で財産はスッカラカン。
四十数年、田地田畑やものを売って、売って、売りつくして生活していました。
でも、寄付とかには一番先に名前が載っている変わった貧乏でしたわ。

家の気位だけは高くて、村の人間にさんをつけてはいけない、呼び捨てにしなさいと言われてましたけど、私には、よくわからんかったですね。


この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。

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