『わかる』ハシモト会長かく語りき

第2話 三つ子の魂百まで 「下からもの見たら 何か見えへんかな」

貸家もいっぱいあるねんけど、家の中は火の車。
終戦後、「どないして飯を食うていこうか」
兄弟五人、顔を突き合わせてはそんな会話をしてました。

外の人から見たらまともに見えるねんけど、実際はそうじゃない。
人に一生懸命尽くして、家の中はほったらかし。
よく憲兵に家を張り込まれてねぇ。
うちには、盆も正月もなかった。

そんな私は、子供心に「俺、何かしたろう」と、思ってましたね。

六つくらいの時だったかな、露天商の真似をして、いつも、地べたに座ってた。
下からものを見たら何か見えへんかな、どうしたらものが売れるんかなぁとね。

「お前なんで座ってんねん」

「私、何かせなあかんと思って座ってますねん。

下から見たら、違う景色が見えるかなぁってね」

「お前は、可愛げのないやつやな」

よう、そんな風に言われましたなぁ。

母親に何にも収入がないので、食べるもんもない。
貧乏は辛く苦しいもんやと思いながら、十歳過ぎた頃は自分の体より大きなもの下げて、お金を稼いでましたね。
私の頭の中には、いつもそのことがこびりついているんです。
それが、私の人生の出発やと思いますね。


この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。

『 わかる。ハシモト会長かく語りき』