『わかる』ハシモト会長かく語りき

第3話 三つ子の魂百まで 「なんもないからやる」

「橋本家には、人に迷惑をかける血は流れてない」

たったこれだけを、聞かされて育ったのですが、私ら兄弟には、そんなんどっちでもええがなって思ってました。
お正月にお年玉をもらった記憶がない。
貧乏人の子にはくれないわけです。
「親がお返しをせないかんから、困るやろ」と言われてね。

もらえヘんから何とか稼いでやろう思って、すごいことしたんですわ。

田舎では、お正月に三日間だけ博打をするのです。
大人の世界に入って金がないから、ちびりちびりとやる。
しばらくすると、法則が見えてきてずっと勝ち続ける。
それが自分の小遣いなんです。

未だに記憶に残ってるんですね。
なんもないからやるんや、という理論が子供の時分から頭に入っていた。
その感覚で、今日まできてます。

あるからやるんやない、なんもないからやるんですわ。

そうそう、金が底をつくと親父は家に帰ってくる。
その度に、子供の私にこう言うてました。

「お前の名前には皎ってつけとんねん。
人生っちゅう道の真ん中を堂々と歩く人間になれ。
広い道を歩け!」

そして、家財を売ってお金にしては、どっかへ行ってしまうんです。


この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。

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