『わかる』ハシモト会長かく語りき

第8話  表の人生やろうや「おおきに おおきに」

早速、家に帰って糊の研究や。
せやけど、糊つけたかて、なんぼやってもほんまにひっつかへん。
やり始めたら、今度は紐が長くて場所がない。

公園や田んぼで糊付けやっとったんです。
それで、紐を持って加工しよう思ったら、カチカチになってしまって..。
どないもならへんのです。

「お前独立したんやろ。俺のことつこうてくれんか」

「給料払われへんぞ」

「そんなもん、いらん」

そんなやつばかりが、狭いところへ集まってきてね。
友達の家を仕事場にして始めたんです。
場所を借りたら家賃かかるでしょう。

だから「おまえんとこの家の留守番を引き受けてやるわ」と言うて、管理人になってタダで住んでたんですわ。
でも二年間。二年経ったら、必ず出ようと思ってました。

人が集まり、場所ができたら、次は機械が要る。
ケチでどないもならんナカモリという機械屋のおっさんがいてな。
そのおっさんに駄目もとで、「機械を貸してくれへんか」と聞いてみたら、思わぬ返事が返ってきたんや。

「橋本さん、好きな機械持って帰り。金できたらもっといで」

「おおきに」

それから私は、恩義を感じて、機械という機械は、すべてそのおっさんから買うてます。
当たり前のことやな。


この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。

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