『わかる』ハシモト会長かく語りき

第15話 内助の功「早う逝きおってアホ」

ある時、銀行から招待されたパーティがありましてね。
うちの嫁はん、仕事着のままで参加したんです。
「格好は汚くても、心の中が綺麗であれば、恥ずかしいことはあらへん」と、へっちゃらだった。
宝石一つ買うたことがなければ、格好一つ気にせん。おもろい女や。

いっぺんだけ、嫁はんがこう言うてきたことがありました。
「あんたは、まともな世界を歩きなはれ。税金払わんでもええとこにいて、都合のええことばかり考えて、お金残したとしても、何の意味もない。子どもも、従業員もおるのだから、堂々と歩きなはれ」とね。

当時、ある地域におると税金を逃れられたんですが、私は真っ向から払っていった。
天王寺区に事務所を構えたのは、そういう意味からなんです。
この天王寺区のビルを探した時、ここならいい、と嫁はんに言われてね。

税金も今日までごまかしなし。
多い時で1日、三十五万円払(はろ)うてる時代もありましたね。
税務署から「赤字を出さない哲学を教えてくれ」と言われたけど、そんなもんあらへん。
相手がようなることを考えて、コツコツやってきただけや。

「おれは、小学校二年生までしかいっとらん」と嫁はんに言うと、「あんたはそれが一番良かっ
たんや。まともに学校でも行ってたら、しょうもない人間になっとった。
二年生で良かったんや」と、返してくる。
それが腹立ってしゃーなかったわ(笑)。

早よう逝きおって、アホ」と言いたい。

歳を重ねれば、重ねた人生がある。
それを、一緒に歩けたら良かったのになぁ。


この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。

『 わかる。ハシモト会長かく語りき』