『わかる』ハシモト会長かく語りき

第37話 証言「いいもん つくりなはれ」

長谷信義
株式会社ナガタニ 代表取締役

一世を風靡したイタリアのブランドをつくりあげたデザイナーが、いち早く中国生産に乗り出した時、皆、中国に飛びつきました。
橋本社長と私は、その流れには乗らず、メイドインジャパンにこだわったんです。

どうでしょう。
あの時、中国に出て行った人たちは、一時は儲けたかもしれませんが、結局、価格競争に巻き込まれて苦しんでいます。
橋本社長の考え方、生き方は、ハイクオリティで、よそにないものをどうつくり続けるかなのです。

私は、高級品をつくる修行を十五年ほど積み、和光さんをはじめ、日本を代表する百貨店やメーカーさんとの出会いのなかで仕事をさせてもらっています。

流行というのは、昔は長くて 十年、今は三年。
その変化のなかで、結局、何が残ったんやろな、と改めて考えてみると、
「国内でいいもんつくっていれば必ず生き残れる」 という精神やと思うんです。

その精神とは、ともすればブレることもある。
そうならなかったのは、橋本社長の生き方を間近で見て、ものづくりをしてきたからです。
流行で売れるものは何か、という本質をよく見極めること。

橋本社長はその読みが深いんやろな。あっちが売れてる、こっちが売れてる、ということではなく、三十年後どうなってんの?という目利き。

これが橋本流ちゃうかな。
一見、非現代的だけど、そこに、若い人が集まってくるんですからね。
今になって、ようやくわかってきたんです。
でも、死ぬまでわからんやつが多いんやろな。


この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。

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