『わかる』ハシモト会長かく語りき

第41話 証言「優秀な人はいらん」

津田 昇
井手商事 元部長

輸入生地や雑貨の卸問屋で部長をしていた頃、ある企画を思案していました。
それは、おしゃれコートの生地でバッグやシューズを楽しむといった、同一素材でのトータルファッションでした。
企画は通ったものの、さて、誰に声をかければ良いのか。

そんな時、東レさんから「ハシモト産業という会社がありますよ。ただ、ユニークな社長なので言葉に気をつけるように」と紹介されたのです。
悪い企みがあるわけでもなし、早速、出向きました。
ひとしきり話をすると、「ええやんか」とジョイントしてくれることに。
後にその企画は、革製品を中心とした常識を破る内容で、大ヒットを飛ばしたのです。

それからのお付き合いですが、さりげない橋本さんの一言が胸に響き、私の人生観は大きく変わりました。
特に印象的なのは「優秀な人はいらん」
「ハシモト産業は教育してへんのに社員が伸びる」という学びです。

「うちは、よそが外した勉強せんかったもんを中心に集めてるのや。
学校で勉強したもんは、知恵を使いすぎて社会でへたばってしまう。
うちの人間は 知恵がいっぱい残ってるからイキイキしとるわ」と。
その哲学はすばらしいと思いました。

六十五歳で現役引退し、今では朝耕夕釣の生活。
午前中は菜園を耕し、夕方は波止場に渡り四季折々の魚たちとの対話を楽しむ。
今でも橋本社長からの学びを胸に、健康で生きられる喜びに勝るものなしと感じ入る日々です。


この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。

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