『わかる』ハシモト会長かく語りき

第42話 証言「商売ってのは そこから始まるもんや」

駒井 友未子
「旬菜」オーナー

私の主人は、船場にある靴屋の老舗、駒井本店の八代目でした。
長い間、古い体質としがらみから抜け出せず、兄弟関係、親子関係の難しさに苦労していました。
自分たちで積み上げては崩される。その繰り返しだったのです。

そんな主人が変わりはじめたのは、ビジョン会との出会いからでした。会の学びやメンバーの皆さんから刺激を受け、自由な環境で何かに挑戦してみたくなったのでしょう。「店を辞める」と、無一文で飛び出してしまったのです。

さて、どうしよう・・・。ちょうどその頃、私が料理教室を開いていたので、飲食店をやろうということになったのです。
なけなしの貯金をはたいて、それを担保に資金集めに走りました。
しかし、銀行に話をつけ、借りる段階になると、直前に断られてしまう。

今度は信用組合に行って話をつけると、また、寸前で断られる。
探ってみると、母が介入していたのです。
そんな時でした。橋本さんに「商売というのは、そこから始まるもんや。今までの駒川くんは苦労はあったかもしらんけど、実際の事業家ではなかった。だからこれからや」と、言われたのです。

銀行を諦め、国金からお金を借りようと、橋本さんに保証人をお願いしました。
黙って決算書を渡してくれましてね。
そのおかげで、満額借りることができたのです。

事業のためのはじめての借金。
こうして、「旬菜」というお店ができたのです。
まさに、ここからが苦労の始まりでした。


この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。

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