外国人が売る通天閣の包丁屋
「おまえ通天閣の下にある包丁屋知ってるか? 外国人が日本の包丁売っとんねん。いっぺん行ってみ。」
「おれもそこで何本も包丁買うてんけど、外国人が日本人に向かって丁寧に包丁の良さを説明して伝えてるわけや。」
ハシモト産業株式会社のハシモト会長が語るその包丁屋さんとは大阪の通天閣の下と東京のスカイツリーの下にもある包丁専門店タワーナイブズ。
店主のデンマーク育ちのカナダ人ビヨンさんはバックパッカーの時に地元の大阪人に親切にされたことをきかっけに日本に移住。
ナイフ好きだったビヨンさんは日本の包丁の切れ味に魅せられ体験できるショールームとしてこのお店を始めました。口コミで噂は広がり、今は海外からのツアーのルートになり、テレビで話題になるまでに。

伝えること
会長は本物の革というものにこだわり、製法も植物性のタンニンで作るフルベジタブルタンニンのヌメ革にこだわり、手間と時間をかけて栃木レザーと一緒に革を作ってきた。
「包丁も革も同じや。伝えないとその良さは伝わらない。」
「本当の革の良さをまだ誰も知らない。だから革の良さを丁寧にちゃんと伝えていって欲しい。」

後でわかる
使うほどに色艶と味わいが増してくるのヌメ革を専門にしている栃木レザーの魅力。
「なんでも、革ってもんはその時は差がないねんけども、後が違ってくるわけやねん。」
スタッフ「使ってみると違うんですね。」
「・・・」
「ええ嫁はんもろたか、悪い嫁はんもろたかいうのはな。・・・それや。」
一同、声を揃えて「後でわかる。」
「な、みんな後でわかったやつばっかりや。困ったもんで。」
スタッフ「すんません(笑)」「味をよう出さへん。下手くそなんですよ。」
いつもユーモアを忘れない会長。
そんなやりとりをしながらゆっくりとドアから出ていった。

(つづく)
この連載について
「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。
80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。