栃木レザーにはもともと傷がある。
「傷があるのが”ほんまもん”の革の証拠や。人間も傷だらけやないか」
といいながらクアトロガッツの革の師匠、ハシモト産業株式会社のハシモト会長は栃木レザーを見せてくれた。
大阪の人間は偽物を「ばったもん」本物を「ほんまもん」と言う。
大阪環状線のある駅では改札から出ると「ばったもん」を売る店があったりする。
会長はほんまもん基準でモノを考える。流行や儲け話には耳を貸さず、世の中の動きにも「おかしいぞ。じっとみとけよ」と言う。そしていつも世間の逆を行く。

革の上から塗料を厚塗りすれば見栄えはいいかも知れない。ショーウインドウに並べばきれいかも知れない。個体差もないし扱いやすいかもしれない。でもそれではいつまでたっても味の出る革らしい革はできない。
何百年も続いている昔ながらの方法、時間をかけて植物性のタンニンだけで鞣しているからエイジングする「”ほんまもん”の革」に仕上がる。
「ほんまもんをつくろう。そういう世界を作っていこう。」会長の口癖。
使っていくことでついた傷やシミ。それも勲章。
大阪にはこんな曲がある。
「背中の傷が男の勲章 やと、そう言うおっさんが西成にはおった。」上田正樹 & southtosouth /むかでの錦三
ご興味あればYOUTUBEで検索くださいね。

この連載について
「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。
80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。