(C)2020 Campo Cerrado All Rights Reserved.

「私はヴァレンティナ」

2022年4月1日より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開

監督・脚本/カッシオ・ペレイラ・ドス・サントス
出演/ティエッサ・ウィンバック、グタ・ストレッサー、ロナルド・バナフロ、レティシア・フランコ、ロムロ・ブラガ、ペドロ・ディニス

私はヴァレンティナ公式HP
劇場情報

今回は4月から全国順次公開される新作「私はヴァレンティナ」を紹介。
ブラジルの小さな街に母親と引っ越してきたヴァレンティナは17歳のトランスジェンダー。 

戸籍上ではラウルと言う名前だけど、ヴァレンティナという通称名で、“女子”として学校に通いたいと、母親とともに転入先の担当教師に希望を提出。

受け入れられることになったものの書類手続きのために両親のサインが必要と言われる。実は彼女の父親は蒸発しており、母と共に期日までに捜さなければならないことに。

一時的に補修授業を受け始めた彼女には、妊娠中のアマンダとゲイのジュリオという友だちができて、試験的とは言え学校生活を楽しむ。

しかもパソコンに強いアマンダが、父が以前使っていたスマホの電話番号から居場所を見つけ、さらに新しい電話番号まで調べてくれ、勇気を振り絞り電話をかける。

そんな時、友人たちと行った年越しパーティーで酔ってしまい眠り込んでしまう。
その時にある男性に襲われてしまう。

さらに翌日、SNSなどで秘密にしていた自身のことをバラされ、はては脅迫されたり、学校への入学を拒否するという署名運動まで起こされてしまう。
心配する母親に対し、改めて自分自身と対峙し、学校への入学を認めさせるために立ち向かうという話。

LGBTQ の権利保障のため、同性婚も認められているブラジルだけど、市民レベルでいうと、認めたくない人々が圧倒的に多いと言われている。実際、トランスジェンダーが学校を中途退学する率は82%もあって、さらに平均寿命は35歳と言われており(結局、貧困から身体を売る仕事などにつかざるを得なくなる場合が多いゆえ、薬物や病気のリスクが高い)、定義上は認められているが実情はいまだ数々の問題を抱えているのだ。

ちなみにトランスジェンダーとは、身体と心が一致しない人のこと。例えばこの作品の主人公のように生まれた時は男性だけど、自身を女性だと認識している方で、その逆も然り。

ヴァレンティナを演じているのは、実際もトランスジェンダーとしてYoutuberやインスタグラマーとしてブラジルでは熱狂的な人気を持つティエッサ・ウィンバッグが演じており、映画での説得力ある存在感は素晴らしく、ラストの表情はグッと胸を締め付けられる。

ここ数年、日本でもトランスジェンダーの方たちが、同じく体と心が一致しない人たちの悩みや不安をサポートをする活動をしていたりするけれど、そういうことがもっともっと広がって、10代で悩んでいる子たちにも伝わってほしいと思った。

仲谷暢之
大阪生まれ。吉本興業から発行していた「マンスリーよしもと」の編集・ライティングを経て、ライター、編集者、イベント作家として関西を中心に活動。


テアトル虹 今改めてオススメしたいLGBTQ+映画 すべての記事はこちら


小さいふ「Pride Movie」LGBTQ+