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「シャイニーシュリンプス 世界に羽ばたけ」
10月28日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国公開

全仏大熱狂!観客動員数70万人突破!(※シリーズ累計) お騒がせな水球チームがゲイゲームズ出場のため【東京】を目指す! ・・・はずが、異国の地で大ピンチ!?大胆不敵なポジティブ・ロードムービー

監督・脚本:セドリック・ル・ギャロ、マキシム・ゴヴァール
出演:ニコラ・コブ、ミカエル・アビブル、デイヴィット・バイオット、ロマン・ランクリー、ローランド・メノウ、ジェフリー・クエット、 ロマン・プロー、フェリックス・マルティネス、ビラル・エル・アトレビー、ピエール・サミュエル、ブリアナ・ギガンテほか

シャイニーシュリンプス 世界に羽ばたけ公式HP
劇場情報


10月28日(金)から公開の「シャイニーシュリンプス 世界に羽ばたけ」は、昨年夏に公開された「シャイニーシュリンプス! 愉快で愛しい仲間たち」の続編。
前作は以前紹介させてもらいましたが、同性愛者への酷い言動をきっかけにペナルティとして、ゲイの超弱小アマチュア水球チーム「シャイニー・シュリンプス」のコーチを引き受けざるを得なくなった水泳の元銀メダリスト、マチアスの目を通して、個性豊かなゲイたちの陰陽な姿を描いたコメディでした。

今作では、ゲイのオリンピック「ゲイゲームス」の開催地である、日本へと向かうシャイニーシュリンプスとコーチのマチアスと新メンバーが、トランジット・ポイントを間違え、極寒のロシアの某地に到着。仕方なく翌日の離陸のため、ホテルで一夜を過ごすことに。

おとなしくしてればいいものを一部のメンバーがゲイのマッチングアプリで地元のゲイと会うことになったことで、国から出られなくなってしまいます。はたしてシャイニーシュリンプスのメンバーは無事に東京に到着し、ゲイゲームスに出場することができるのだろうかってストーリー。

実はアプリで知り合った地元の男たちはホモフォビア(同性愛嫌悪)で、マッチングし出会ったゲイに制裁を加えている奴ら。そしてシャイニーシュリンプスが降り立ったロシアの某地は“うちの国にはゲイなんてものは存在しない”という議員たちがいる、国を挙げてゲイへの弾圧を推奨する地だったってことがわかります・・・。

前作では個人が抱くホモフォビアからの心の移り変わりを描いていましたが、今作は国自体がホモフォビアであるという、規模がデカくなってます。
今年、日本でも公開された「チェチェンへようこそーゲイの粛清ー」というドキュメンタリー映画(Prime videoやU-NEXTなどで見ることができます)がありました。

ロシア支配下にあるチェチェン共和国は国家主導でゲイ狩りが横行し、連行、拷問、殺害と、彼らの存在自体を抹消しており、それでも決死の国外脱出を試みるLGBTQの人たちと彼らを救出に奔走する活動家たちを追った内容で、恐らく、「シャイニーシュリンプス〜」の監督たちも見たのじゃないかなってくらい設定が似ており、前記した“うちの国にはゲイなんてものは存在しない”という発言は、実際「チェチェンへようこそ〜」の中で現首長のラムザン・カディロフが発言しており、いちいち憤りしか感じない。ちなみにカディロフ首長はプーチンの傀儡として、キーウなどへの“戦争”を率先して行なっている奴。

そんな実際の国をモデルにしている今作も拘束されたメンバーはある収容所に入れられるのだけど、ここがもう時代錯誤も甚だしい場所で、そこで行われるのはゲイのホモフォビアによる謎の特訓や、数学者アラン・チューリング(映画「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」に詳しい)にも施されたと言われている電気ショックでゲイが治せるという療法が行われたりして(ちょっとカリカチュアしすぎだけど、ロシアならありえるのかと思えたりもする)、狂信的な女性所長のイキ過ぎた感が凄い。

そんな収容所からの脱出劇もあり、正直、水球はどうなってんの?と思えるのだけど、監督たちはこの問題をとにかく提示したかったんだと思う。さらに、シャイニーシュリンプスメンバーの抱える問題もさらに深掘りし、ノンケのコーチのマチアスが勝手に“ゲイ”だと思って参加させたセリームという若者のセクシャリティの揺らぎや、前作で恋人を亡くしたアレックスの苦悩などがドラマに厚みを持たせてくれています。

そして前作ではボニー・タイラーの「Holding Out For A Hero」が効果的に使われていたけれど、今作では、デヴィッド・ボウイの「Heroes」がクライマックスで効果的に使われています。
さらにYouTuberとしてお馴染みのブリアナ・ギガンテが日本を代表するドラァグクイーン兼ポールダンサーとしてオイシイ出演を果たし、エンディングは、日本のBL風イラストをバックにビッケ・ブランカが監督とともに書き下ろした曲「Changes」が使用されているのがなんとも嬉しかったりします。


仲谷暢之
大阪生まれ。吉本興業から発行していた「マンスリーよしもと」の編集・ライティングを経て、ライター、編集者、イベント作家として関西を中心に活動。


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