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「ウィキッド ふたりの魔女」
2025年3月7日(金) TOHOシネマズ梅田 他 全国ロードショー
〈STORY〉
やがて世界に「悪い魔女」「善い魔女」と語られるふたりの、まぶしくて切ない物語。魔法と幻想の国オズにある〈シズ大学〉で出会ったふたりー
誰よりも優しくて聡明でありながら家族や周囲から疎まれ孤独なエルファバと、誰よりも愛され特別であることを望むみんなの人気者グリンダが、大学の寮で偶然ルームメイトに。
見た目も性格も、そして魔法の才能もまるで異なるふたりは反発し合うが、互いの本当の姿を知っていくうち、いつしかかけがえのない友情を築いていく。
ある日、誰もが憧れる偉大な魔法使いに特別な力を見出されたエルファバは、グリンダとともに彼が司るエメラルドシティへ旅立ち、そこでオズに隠され続けていた“ある秘密”を知る。それは、世界を、そしてふたりの運命を永遠に変えてしまうものだった・・・。
監督:ジョン・M・チュウ
脚本:ウィニー・ホルツマン
製作:マーク・プラット、デイヴィッド・ストーン
原作:ミュージカル劇「ウィキッド」/作詞・作曲:スティーヴン・シュワルツ、脚本:ウィニー・ホルツマン
出演:シンシア・エリヴォ、アリアナ・グランデ、ジョナサン・ベイリー、イーサン・スレイター、ボーウェン・ヤン、ピーター・ディンクレイジwithミシェル・ヨーandジェフ・ゴールドブラム ほか
配給:東宝東和
上映時間:2時間41分
ウィキッド ふたりの魔女 公式サイト
劇場情報
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今回紹介するのは、3月7日(金)から公開される『ウィキッド ふたりの魔女』。
今作は2003年、ブロードウェイで開幕し、今も上演されているミュージカル『ウィキッド』の映画化(日本でも大阪で7月まで公演中)で今年のアカデミー賞では衣装デザイン賞と美術賞に輝いた作品。
このコーナーの1回目で取り上げた『ジュディ 虹の彼方に』で描かれた女優ジュディ・ガーランドが主演し、のちに彼女がゲイのアイコンとなるきっかけとなった映画『オズの魔法使』の以前を描いたもの。


今作を知ったのは、個人的に影響を与えてくれたミュージカル『レント』で奔放なレズビアン、モーリーンを演じたイディナ・メンゼル(ディズニーアニメ映画『アナと雪の女王』のエルサ役で「レリゴ、レリゴー」歌ってた人!)が、今度ブロードウェイで映画『オズの魔法使』をモチーフにしたミュージカル作品に、顔を緑に塗って、エルファバ役として出演する!というニュースを読んで。
“あぁ観たい!なんとしても観たい!”と思っていたものの、金もなけりゃ時間もなく、ましてや親の介護もあった身としてはブロードウェイなんて行けるはずもなく、万一行けたとしてもチケットなんて遥か先までソールドアウト状態。どうしても見たければ太いパイプか、お金にものを言わせるしかない。だけど金もなけりゃ・・・(以下略)。

結局、観にいけないまま彼女の契約は終わり降板。後悔していたら、なんと2006年にユニバーサルスタジオ・ジャパン内に“ランド・オブ・オズ”というエリアが誕生し、そこで35分の短縮版が上演されるいうニュースが!
ま、ユニバなら行けるか!と、首を長くしてエリアのオープンを待ち、妄想パンパン状態で足を運んだ。

当然、イディナ・メンゼルは出ていなかったけれど、ダイジェストとしてはなかなか迫力があり、ラストに歌われた「ディファイニング・グラビティ」が高揚感高まる曲で、思わず落涙したことを覚えている。
それから3年後の2009年、東京での公演が終わった「ウィキッド」の大阪公演が開幕し、初日に見に行き、完全版を堪能した。

そういえば、この初日の1幕目のラストを迎えた時に歌われた曲が、“ランド・オブ・オズ”でのショウのラストを飾る名曲「ディファイニング・グラビティ」だったので、それが舞台でもラストだと勘違いして、帰ろうとしたお客さんがいたと後で聞いたっけ。
そんなことを思い出しながら、待ちに待ってひと足先に試写で見せてもらった映画版。
今作は二部作のパート1で、舞台で言えばまさに“ランド・オブ・オズ”での短縮版のラストと同じく「ディファイニング・グラビティ」でTo be continueとなる(見終わったら、ただただパート2が待ち遠しくなってしまう)。

舞台版よりもさらにキャラクターが掘り下げられ、エルファバのとグリンダとの関係のプロセスも丁寧に描かれていて、どちらにも共感するよう作られている印象を持った。
そしてミュージカルナンバーもアレンジがさらにゴージャスになり、すでにTikTokなどでもさまざまな踊りのミームが生まれているだけあって、ダンスも舞台版とは違う攻めた感じになっており、みごと映画版としてアップデートしている!

そして作品に携わった人たちも多様性に満ちており、LGBT +色にも溢れているのだ。
前記した黒人男性初の衣装デザイン賞を受賞したデザイナー、ポール・テイズウェルはオープンリー・ゲイだし、エルファバを演じたシンシア・エリヴォは、2022年に自らバイセクシュアルであるということをカミングアウトし、長年のLGBTQ+コミュニティ支援の活動を称えられて、昨年、LGBTセンターからシュレーダー賞を受賞。

そしてグリンダ役のアリアナ・グランデは、兄がゲイということもあって、以前よりLGBTQ+の人権を保護する活動を行なっているし、今作のプリンスであるフィエロ役のジョナサン・ベイリーと、グリンダの取り巻きのひとり、ファニー役のボーウェン・ヤン(前回紹介した『ディックス!ザ・ミュージカル』でビッチな神様役を演じている)も、以前よりゲイを公言している。
そういや、今作で物語の鍵を握るシズ大学の教授、マダム・モリブル役のミシェル・ヨーもアカデミー賞主演女優賞を受賞した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』ではクィア女性を演じ、さらにクィアの娘を持つ母親も演じていたっけ。

映像の中にもあちこちにゲイキャラが隠しコマンドのように散りばめられ、発見するとついニヤニヤしてしまう。
そういった役者たちのバックボーンも知ると、今作にあるマイノリティへの迫害といった問題提議が違った形で浮かび上がり、『ディファイニング・グラビティ』という曲の意味が胸にズーンと響くと思う。

仲谷暢之
大阪生まれ。吉本興業から発行していた「マンスリーよしもと」の編集・ライティングを経て、ライター、編集者、イベント作家として関西を中心に活動。
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