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「BETTER MAN/ベター・マン」
2025年3月28日(金) 全国ロードショー
監督・共同脚本・プロデューサー:マイケル・グレイシー
共同脚本:シモン・グリーソン、オリバー・コール
出演:ロビー・ウィリアムズ、ジョノ・デイヴィス、スティーブ・ペンバートン、アリソン・ステッドマンほか
配給:東和ピクチャーズ
BETTER MAN/ベター・マン 公式サイト
劇場情報
今回紹介するのは3月28日(金)から公開される『BETTER MAN/ベター・マン』。
1990年代初頭から中期にかけて活躍したアイドルボーイズグループ“テイク・ザット”のメンバーを経て、現在もソロミュージシャンとして活躍しているロビー・ウィリアムズの半生を描いた物語。
“テイク・ザット”はデビュー当時からファンでした!なんなら今も好き!個人的には『ペイシェンス』と再結成してからの『Shine』はカラオケでは必ず歌ってしまうマイ・フェイバリット・ソング。
なぜ好きになったかというと、このグループの、最初の売り出し方が当時のイギリスのゲイをターゲットにして、ゲイクラブをメインに営業活動をしているという情報を知ってから。
当時はまだネットなどが普及していない時代。情報は音楽雑誌くらいからしか得ることができなかった。そんな中でテイクザットのデビューとその戦略は、とても興味を持った。
記事には確かこれからはゲイをターゲットにして、彼らに認められ支持されれば、いずれは女性にも飛び火して人気が出るだろうということが書かれていた。そしてゲイマーケティングに絞ったノンケボーイズグループの先駆けとしてこのグループは日本でも注目されるだろうというようなことが書かれていた。
そんな記事に添えられていたのが、Tバック姿のメンバー5人がお尻に“TAKE THAT”の文字を貼り付けたビジュアルで、当時としてはなかなかに、ごちそう、いや、衝撃的なインパクトで印象に残っており、そこから彼らのアルバムを聴くようになり、徐々に沼りはじめ、中でもロビー・ウィリアムズのヤンチャなムードが個人的には大好きで、今で言う“推し活”対象となっていた。
とはいえ、イギリスでは国民的ミュージシャンとして確固たる地位を築いているのに、日本にはちゃんとしたライブツアーでの来日が一回もなくて、ずーっと残念に思っていた。
しかし、本人の来日よりも先に、日本でも大ヒットしたミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』のマイケル・グレイシー監督によって、ロビー・ウィリアムズの半生をミュージカルとして、なんと、なんでか、“猿”に置き換えて描くという攻めた内容で映画化、3月28日(金)より公開される。
なんでも監督が『グレイテスト・ショーマン』を製作中にロビーと知り合って、次第に仲良くなり、彼の人生など話しているうちに、彼の人生を映画化しようと。さらに彼が発する言葉の中に、自分自身を猿になぞらえた表現が多かったので、映画のアプローチの方法を模索していた中で見つけたのが、ロビーを猿に置き換えれば、斬新かつ動物を通して人生を見ると違った感情や視点が生まれるのではないかという試み。
だから基本的に、“なんで猿やねん”という疑問は愚問だ。プロデューサーも、ナレーションも、出演もしていて(ただしモーションキャプチャーで素顔は出ていない)本人が納得済みなのだから、我々がどうのこうの言ってもしょうがないのだ。しかもこの主人公が猿になっていることによって、アーティストは見世物であるというのが比喩として成立しているので無問題である。
夢ばかり追ってるダメパパからエンタメを教えられ、おばあちゃん、お母さんから愛情を注がれたロビー少年が、オーディションでボーイズグループのオーディションをを経て、合格。やがてメンバー内の不協和音や妬み嫉み、孤独、恋愛、お約束のドラッグ沼と、ベタなエンタメ業界男子の半世紀が描かれているのだけど、暗部を描いていても、どこかカラッとしている。それに前記した、ゲイクラブでのキャンペーンの模様も再現されていて、個人的には懐かしいものとなった。
そしてこれは『グレイテスト・ショーマン』にも通じる監督の気質なのかもしれないけれど、ストーリーの辻褄に無理があろうが、別にいいやん。ディテールこそが全てなんすよ。ロビーの猿がいて、いい音楽があって、いいダンサーが揃ってビジュアルが映えてれば、観る人は多幸感でいっぱいになるんですってな信念を感じる。とりあえず景気がいい。
特に、ロンドンのリージェント・ストリートを舞台に『ROCK DJ』を歌い踊るシーン、豪華ヨットでのダンス、ロイヤル・アルバートホールでのクライマックスシーンは、セラトニン、ドーパミン、オキシトシン、エンドルフィンという幸せホルモンがブッシャーとなるははず。
ロビー・ウィリアムズ、これを機に来日公演してほしい。今こそ、90年代にテイク・ザットとロビーの洗礼を受けた熟年ゲイがこの映画を観に劇場にどんどん足を運べばもしかしたら実現するかもしれない。だって、これまたゲイのアイコンミュージシャン、カイリー・ミノーグだって来日したんだから。
仲谷暢之
大阪生まれ。吉本興業から発行していた「マンスリーよしもと」の編集・ライティングを経て、ライター、編集者、イベント作家として関西を中心に活動。
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