
©2025 『ブルーボーイ事件』 製作委員会
「ブルーボーイ事件」
2025年11月14日(金)より公開
監督:飯塚花笑
キャスト:中川未悠 前原滉 中村 中 イズミ・セクシー /錦戸亮
脚本:三浦毎生 加藤結子 飯塚花笑
製作:アミューズクリエイティブスタジオ KDDI 日活
制作プロダクション:オフィス・シロウズ
配給・宣伝:日活/KDDI
「ブルーボーイ事件」公式サイト
劇場情報
今回は11月14日(金曜日)から公開される「ブルーボーイ事件」をご紹介。
1965年10月に男娼3人に対し、性転換手術を行なった医師Aを東京地方検察局が優生保護法違反で摘発され、1969年に東京地裁で医師に対し、懲役2年(執行猶予3年、罰金40万円)の有罪判決が下されたという実際にあった事件をベースにした作品。ちなみにブルーボーイとは、体を女性化した男性のことを呼称した当時のスラングで、のちにニューハーフやトランスジェンダーと変化していってます。


あらすじ
1965年、オリンピック景気に沸く東京で、街の浄化を目指す警察は、街に立つセックスワーカーたちを厳しく取り締まっていた。ただし、ブルーボーイと呼ばれる、性別適合手術(*当時の呼称は性転換手術)を受け、身体の特徴を女性的に変えた者たちの存在が警察の頭を悩ませていた。


戸籍は男性のまま、女性として売春をする彼女たちは、現行の売春防止法では摘発対象にはならない。そこで彼らが目をつけたのが性別適合手術だった。警察は、生殖を不能にする手術は「優生保護法」(*現在は母体保護法に改正)に違反するとして、ブルーボーイたちに手術を行っていた医師の赤城を逮捕し、裁判にかける。


同じ頃、東京の喫茶店で働く女性サチは、恋人の若村からプロポーズを受け、幸せを噛み締めていた。そんなある日、弁護士の狩野がサチのもとを訪れる。実はサチは、赤城のもとで性別適合手術を行った患者のひとり。赤城の弁護を引き受けた狩野は、証人としてサチに出廷してほしいと依頼する。


今の生活を壊したくない、と証言を拒んだものの、赤城の逮捕で残りの手術ができなくなり途方に暮れるサチ。新たな医師を探すうち、彼女はかつて働いていたゲイバーでの同僚アー子と再会。自分のバーを開くために奔走するアー子は、そのきっかけにもなるかと、裁判での証言をするが・・・。


40代以上の人には性転換という言葉を聞くと、モロッコで手術をしたカルーセル麻紀という存在が大きいと思う。それだけにブルーボーイ事件という事象を知らない人がほとんどじゃないだろうか。
かくいう自分もこの映画を見るまで全く知らなかったし、美輪明宏ら1950年代にシスターボーイと呼ばれていたことを知っていたとしても、1960年代に女性になった男性のことをブルーボーイと呼んでいたことは知らなかった。

今回、映画資料にあった「性転換」性別移行年表を読ませてそんなに歴史が深かったのかとびっくりした。それを見た上で今作を振り返ると、64年の東京オリンピック以降、高度成長期へ突き進む日本が、いかにそれまであったものを“浄化”したかったのかというのが垣間見れ、作中でも言われていた“見せしめ”という言葉がズンと心に響いた。

さらに“幸せ”とは?について考えさせられる映画でもあった。“幸せ”の価値観は千差万別。同じ“幸せ”という認識は共有できても、度合いは決して共有できない。ましては性別を幹とした“幸せ”はもっと複雑。昭和の時代、ブルーボーイたちにとってその“幸せ”を納得させるには、まだまだまだまだ、まだまだ世間は許さない時代だった。

物語はアー子の証言をきっかけに転がっていく。彼女の“幸せ”の根幹は「女として普通に生きたいだけ」。演じるイズミ・セクシーはドラァグクイーンとしても活躍していて、俳優としては未知数だけど、証言台で語る姿には思わず涙が溢れる。
そしてそれまでブルーボーイに対して何枚ものフィルターがかかっていた弁護士の心も動かしていく。演じる錦戸亮、『県庁おもてなし課』という内容にはう〜んて思う映画だったけど、その時の彼の演技を見て上手いなぁと思っていたものの、すっかり忘れていたけれど、今回改めて再認識。キャラクターのイメージとしては、HIVとゲイへの偏見を法廷で争う映画『フィラデルフィア』で弁護士を演じたデンゼル・ワシントンが頭に浮かんだ。

ラストも一縷の光を感じるのもいいなと思った。現在は法制度が変化し、昔よりは少しづつだけど生きやすい世の中になった(もちろん色々な問題は抱えているけれど)。そんな時代に、この作品で先人たちの思いが描かれたのは素晴らしいと思うし、今回、主役のサチをはじめ、当事者たちが演じているキャラクターが多く、これをきっかけにもっと活躍の場が広がればいいなと切に思った。

仲谷暢之
大阪生まれ。吉本興業から発行していた「マンスリーよしもと」の編集・ライティングを経て、ライター、編集者、イベント作家として関西を中心に活動。
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