『わかる』ハシモト会長かく語りき
第5話 三つ子の魂百まで 「その立場に立たんとわからへん」
私は、小学校二年生までしか学校に行けなかったんです。
叔母の家に預けられて、居づらくなると、また他の家へ。その繰り返しやった。
そんな生活の中で育つと子供らしさはなくなるし、青春もない。
ものの考え方が暗くなるやないですか。
村八分というか、いとこの中にも入っていけない。
いつも、ひとりぼっち。夢なんて、持ったこともない。
よく、「子供の時分にどんなことを考えてましたか」という質問に、もっともらしいことを答えて、「素晴らしいですね」なんていう話を聞きますが、そんなん嘘やと思いますわ。
人間っていうのは、その立場に立たんとわからんもんです。
叔母の家に預けられたのは、ようは、金をもらいに行くわけです。
それが私の仕事。

気持ちよく貸してくれる時もありますが、うまくいかない時もある。
子供だから上手に貸してください」の一言がでない。
母親は、「行ったらわかるから」と、言うんですがね。
もらえるまでじーっと座って、もらったらスッと帰るんです。
そんな役目ばっかりやった。
「自分がやる立場になったらええやろなぁ。
いつも、もらいに行くばっかりやから、払える側の人間になりたい」
そう、思うたんです。
このことが、私の原点
この連載について
「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。
80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。
『 わかる。ハシモト会長かく語りき』