『わかる』ハシモト会長かく語りき
第28話 証言「詐欺やない 金を貸しただけや」
山村久子
ハシモト産業株式会社
大阪本社 経理
社長がイタリアに行きはった時のことです。
学校しか出てないというので、奥様にローマ字を教えてもらったんです。
帰って来てから、イタリア語もわからないのに、どうやって会話しはったんとお聞きしたら、「河内弁で話した」と。
身振り手振り、気持で通じるもんや、と思ったものです。
忘れられないことがありましてね。昔いた社員に、五万円貸してあげたことがあったんです。
他でも借りてはったみたいで、ある時、警察がきはって、詐欺に遭ったやろ?って。
その時社長は「僕は詐欺には遭ってない。金を貸しただけや」って言い張るんです。
心の広い方だなと思いましたね。

社長の感性もすごいですね。
私、よく編み物してたんですけど、細い一本の毛糸から出来上がっている編み物をヒントに、テープをつくることを思いついたんです。
なんかつくってと言われ、テープを細く切りメッシュを編んだら、今度はそれでサンダルを編んで欲しいと。
明日の朝一番に東京に行くから、夕方までに編んどいてな、って。
徹夜しましたよ。
その後、銀座に連れて行ってもらったんです。「これがつくってくれたやつやで」って、有名靴屋のショーウインドウに、私が編んだ靴が飾られていたんで嬉しかった。
経理の私は、始まって、編み物まで(笑)。
請求書発行からうちの会社は辞める人いないんですが、一番関心したのは、西も東も分からん遅刻の常習犯に、社長は、いつか役に立ってくれるという信念を持ち続けました。
今ではその人が中心になって、会社を伸ばしてはるんですよ。
この連載について
「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。
80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。
『 わかる。ハシモト会長かく語りき』