『わかる』ハシモト会長かく語りき

第36話 証言「助けな あかん」

証言の長谷信義
株式会社ナガタニ 代表取締役

これまで、資金面や、精神面で随分と人助けをしてきた橋本社長を見てきましたが、なかでも栃木レザーという会社を助けた時、橋本哲学の神髄を見た気がします。
「そのグループ会社は、地元で手広く事業展開をしていた地域の財閥でしたが、経営破綻に追い込まれてしまったんです。

革の工場が二つあって、ヌメ革製品の下地になるものをつくっていたのですが、完成品を販売しないと商売が成り立たない状況に「なんとか助けなあかん」 と橋本社長が一つの工法を生み出した。
それは誰も気付かなかった画期的なもので、世界中から注目を集めたんです。

この時、誰もが橋本社長が栃木レザーを買収するのが一番良いと思っていました。しかし、橋本社長はあくまでも取引を続けて品物を買うという関係を崩さなかった。これが、彼の生き様なんですね。

こうして、仕入れ先の会社を支援することで、 人、モノが育っていくんです。今は、変化のスピードが速いだけに、「やすーしてくれ、はよーしてくれ」と、得意先に振り回されてしまうことが多い時代です。しかし、橋本社長はそういう仕事の仕方はしないんです。

ここと決めたら、一社にしか売らない。浮気は絶対にしない。
橋本流儀のなかで商売をする。決して、目先の商売をしないのです。
そういうスタイルって、まねしようと思っても、なかなかできへんもんです。




この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。

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