『わかる』ハシモト会長かく語りき

第46話 証言「在庫の山 それが問屋の原点」

川喜田章宏
双日ジーエムシー株式会社 元社長
株式会社ハヤシゴ顧問

「面白い人がいる」と、人を通して橋本さんにお会いしたのですが、我々が知っている間屋さんとは全く違っていました。
大国町の問屋さんとは、材料メーカーからものを仕入れて、それをどこかのメーカーに売る。
在庫も持たず、注文を聞いて商品を右から左へ流すだけ。
品質が悪ければ、返品するか、値引きをする訳です。

ハシモト産業は、すべての商品の見本帳をつくり、すべての在庫を揃えている。
こんな時代に?と思うのですが、裏は在庫の山です。
しかも、そこにしかない商品ばかり。

橋本さんは、ひとつのものを完成させるまで時間をかけてつくりあげる。
仕入れ先と「やる気あるんか」と本気でやり合いながらね。
その仕事の仕方を見て、「これが問屋の原点」と、感じると同時に感服したものです。

本来、問屋というのはユーザーの需要に応じて、商品をさっと出せることが一番大事です。
メーカーも、いいものをつくろうと、商品の品質をあげる。
材料メーカー、問屋、ユーザー、本当に三方良しの考えなんですね。
だから、信用されるし、頼られる。

それがハシモト産業という希有な存在を象徴しているんです。
こんな問屋さん、そんじょそこらにはありませんよ。
そんな橋本流は、すべてに一貫しています。

ハヤシゴの林社長に引き合わせてくれたのも橋本さんで、まさに自分が描いていた会社でした。
その後、三人でイタリアに行ったのですが、旅の楽しみ方も人と違う。
食事にしても、靴を見るのも、ほんまもんしか目に入らない。
あの旅は、私にとって一生の宝物ですね。


この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。

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