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「ディックス!! ザ・ミュージカル」

1月17日(金) 新宿ピカデリー、ホワイト シネクイントほか全国ロードショー

監督:ラリー・チャールズ 『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』
製作:ピーター・チャーニン 『グレイテスト・ショーマン』 音楽:マリウス・デ・フリース『ラ・ラ・ランド』『ムーラン・ルージュ』
出演:ジョシュ・シャープ、アーロン・ジャクソン、ネイサン・レーン『ライオン・キング』、ボーウェン・ヤン、ミーガン・ジー・スタリオン


ディックス!! ザ・ミュージカル
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劇場情報

 

今回紹介するのは新春にふさわしい!?全編、下ネタが溢れまくった内容のミュージカル!

ニューヨークのある会社でトップ・セールスマンとして働くクレイグ、同じく別会社でトップセールスマンとして働くトレヴァー。

彼らは、イケ好かない、自信過剰で、傲慢と欲望をむき出しにしてシングルライフを過ごしているノンケ男。が、そんな二人にもちょっとした悩みがあり、いつも大切な何かが欠けているような思いを抱いていた。

そんなある日、それぞれ働いている会社が合併することになり、二人は偶然の出会いをはたし、双子であることが判明。

そして離婚した父と母を再度復縁させて改めて家族をやり直そうと試みるも、父はゲイであることを、母親はアソコが取れてしまったと告白し、二人に衝撃を与える。

しかしなんとか二人を合わせようと画策するも、両親にはさらに驚愕の事実を待っていたのだった!というお話。

グレイグとトレヴァーという双子のノンケサラリーマンを演じるのは、実際は、カミングアウトしているゲイのコメディアン、ジョシュ・シャープとアーロン・ジャクソンが演じており、今作はそもそも彼らがオフ・ブロードウェイで上演していた30分ほどのミュージカルがベースとなっている。

とはいえ見ているうちに、あれ!?このストーリーって・・・って頭に浮かんだのが、ドイツの小説家、エーリッヒ・ケストナーの「二人のロッテ」(劇団四季でも度々上演されている)であり、これを映画化した「罠にかかったパパとママ」であり、さらにリメイクしたリンジー・ローハン(懐かしい!)主演の「ファミリー・ゲーム /双子の天使」と基本は似ている。

二人も「ファミリー。ゲーム〜」から着想を得たと発言しているし。しかし、このファミリーストーリーを見事に換骨奪胎し、ゲイフィルターを通しつつ、捻れたラブストーリーにド下ネタ、SFのスパイスを散りばめ、最終的にはミュージカルへと昇華させたのは呆れるほど素晴らしいし、実は今作、「ミッドサマー」や「ボーは恐れている」「シビル・ウォー」など攻めた作品を発信しているA24が手がけた初のミュージカル!

主役二人を支える父親役には個人的に大好きなミュージカル俳優、ネイサン・レイン。アニメ版「ライオン・キング」ではティモンの声を。

以前、テアトル虹でも取り上げたミュージカル「プロデューサーズ」では、ブロードウェイ・プロデューサーのマックス・ビアリストックを舞台でも映画でも演じ、フランスのジャン・ポワレの戯曲「ラ・カージュ・オ・フォール」を映画化した「Mr.レディ、Mr.マダム」のアメリカ版リメイク映画「バードケージ」では主人公のドラァグクイーンを演じ話題となった人でこの方もカミングアウト済みのゲイ。

そして母親役には「ふたりは友達?ウィル&グレース」(NHKで放送されていたシットコム。今作はゲイの弁護士が主人公ゆえ、ゲイがらみのネタが多かった)でカレンを演じていたメーガン・ムラーリーに、神様役で登場するのがアメリカのコメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」や3月7日(金)から公開される「ウィキッド ふたりの魔女」にも出演している、アジア系ゲイとして大注目のボーウェン・ヤン。

彼のオネエバリバリの神様ぶりが衝撃的かつクレイジー!しかもクライマックスなんていい意味でも悪い意味でも多様性を見せてくれていてさらにクレイジー!

さらにゲイにも人気のある女性ラッパー、ミーガン・ジー・スタリオンが、短い出番ながらも歌詞的に大いに問題のある一曲を披露しているので、そこにも注目!

誰もが手放しで楽しめるミュージカルではないけれど、はまる人にはさらにクセになる、将来カルトムービー的な一本になるのは必至かも。


仲谷暢之
大阪生まれ。吉本興業から発行していた「マンスリーよしもと」の編集・ライティングを経て、ライター、編集者、イベント作家として関西を中心に活動。


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