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「ラブ・イン・ザ・ビッグシティ」
6月13日(金)より全国ロードショー
監督:イ・オニ出演:キム・ゴウン、ノ・サンヒョン
提供:KDDI 配給:日活/KDDI
「ラブ・イン・ザ・ビッグシティ」公式サイト
劇場情報
今月はプライドマンス。
僕がプライドマンスをテーマにしてデザインした小さいふが発売されて5年目を迎えました。レインボーカラーに新旧LGBTQの映画タイトルを散りばめたそれは、ありがたいことに今も好評を得ています。
とはいえ、そろそろ新作も発表できるよう頑張ります。
ということで今回紹介する映画は6月13日(金)から公開される『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』。
このコーナーでは初の韓国映画。


あらすじ
周囲からいろんな意味で一目置かれている自由奔放で唯我独尊女子のジェヒと、ゲイであることを隠して生きる寡黙なフンス。
ある時、クラスメイトによってフンスの秘密が暴かれそうになった時、手を差し伸べたのがジェヒ。性格の全く違うふたりは、互いの違いを認め合い、ルームシェアをしながらかけがえのない学生生活を送っていく。


世間のルールに縛られず、恋愛や夜遊びなども全力で楽しみながら生きるジェヒに刺激され、閉じこもっていたフンスも徐々に外の世界へと踏み出していく。
そんなふたりの関係は、大学を卒業してそれぞれの道に進んでも、変わらないはずだったけれど社会に出るとそれぞれ大きな転機が訪れ、思いがけないカタチで改めて友情が試されることになる・・・。
韓国での同性愛事情は軍を除いて一応は合法であるとは言われているけれど、古くからの宗教観などもあって、日本よりはまだまだ保守的で生きにくいのが現実。


それだけに今年、アン・リー監督の1993年の映画『ウェディング・バンケット』(アメリカで暮らす台湾人男性とその同性の恋人、永住権を求める中国人女性を巡る偽装結婚や、台湾人の両親との関係をめぐるコメディ)のリメイク作品に出演した『ミナリ』でアカデミー賞助演女優賞を韓国人俳優として初めて受賞した女優のユン・ヨジョンが、リメイク作に出演したことついてのインタビュー内で、実は息子が同性愛者であること、そしてニューヨークで同性婚をしたことを語り、韓国メディアは彼女の発言に対して、「個人の選択と社会のまなざしの間で揺れる人々への静かなメッセージ」として捉え、韓国においてはいまだセンシティブなテーマを、自らの人生、そして演技を通じて語るその姿勢に、深い共感と賛辞が寄せられていました。


そして『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』も昨年秋に韓国で公開されると、異例の大ヒットとなったのもあり、同性愛に対して“さらに”少しづつですが寛容になってきているようです(ただし日本同様、高年齢の方たちや地方では難しいようですが・・・)。
『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』は本来の自分を出せないフンスと、彼を理解しているジェヒとの一筋縄ではいかない男女の友情を描いているけれど、これがね、現実では本当のところ、なかなか難しい。


自分自身の話ですが、20代の頃、ゲイである事を知る女友だちとの付き合いが色々とありました。が、結局のところ、ゲイとつるんでいる事が彼女のステイタスの一つになっている事がわかってこちらが傷ついたり、結婚を機にいきなり疎遠になったりなどが積み重なって、勝手に女友だちとは“程よい距離感”を保った方がいいという考えを持つようになったので、今作を見ながら、フンスとジェヒの関係に、“あの頃”がフラッシュバックし、心にチクチクとした痛みを覚えたと同時に羨ましさも感じました。

さらに、フンスに不器用さ、言動の幼稚さ、苛立たしさを感じ、自分も同じようなことをしていたし、同じような考えを持っていた部分もあったなと再び“あの頃”がフラッシュバック。つい自問自答と苦い思い出を回顧していました。
『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』は、世代によって感じ方が全く違うはず。その感じ方を、機会があれば語り合いたいなと思った映画でした。

仲谷暢之
大阪生まれ。吉本興業から発行していた「マンスリーよしもと」の編集・ライティングを経て、ライター、編集者、イベント作家として関西を中心に活動。
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