小さい旅のことば

「VIETNAM ENGINE」

ちょっとした待ち時間などで読めるように
海外へ行く時には
文庫本を持って行くようにしています。

今回、ベトナムへ旅行したのですが
空港のTSUTAYAでふと目に留まった
詩人谷川俊太郎さんのエッセイ「一人暮らし」を
持って行くことにしました。

飛行機の中で本を開くと印象的な文章に行き当たりました。

「人は母という自然より出て
恋をすることによって
こころとからだ
人間と自然
ふたつの矛盾の調和をとって
生きていくのだと

ただ歳を重ねると
より手を握る、頬に触れる
そんな理屈を超えたからだの触れ合いが
大切になってくるのだ」

そんな風に書かれていたと思います。

自然に生まれ、人として生き、最後に自然に還っていく。
そんなことに考えを巡らせているうちに
飛行機はベトナム ホーチミンのタンソンニャット国際空港に着陸しました。

 

ベトナムにつくと日本ではありえない光景を目にします。
早朝の道を埋め尽くすように走るバイクの群れ。
誰一人信号は守らない。

お店に入るなりぴったりと真横に張り付いて離れない店員さん。
パチンパチンという音に振り向くとさっきの店員さんが壁にもたれてと爪を切りだしている。

「オニイサン20万ドン、ダメ? 10万ドンにスルヨ」
急に半額以下になるモノの値段。

「買わないの? オニイサンのバカ!」

こんな日本なら怒られることが平然と行われている。

 

どちらに住みたいかと言われれば迷わず日本を選びますが
ベトナムが好きなのは人間が本来もっている人間臭さ
むき出しのエネルギーに美しさを感じるからかもしれません。

「こころとからだ
人間と自然
ふたつの矛盾の調和」

エンジンを回すときにガソリンと空気を混合して燃焼させるように
人間も相反するものを調和させて推進力にしていると思います。

ぼくの場合は日本にいると自分でも気付かないうち
からだよりもこころの割合がずっと大きくなってしまっている気がするのです。

でも旅に出て日常から離れて異国の違う環境に飛び込むことで
そのバランスを一歩引いて見ることのできるもう一人の自分の存在に気づきます。

そんな当たり前のことに自分を気づかせるために
またぼくは旅に出るのかもしれません。

[大阪府・男性・クスドタツヤ]




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