『わかる』ハシモト会長かく語りき

第17話 正直の価値「人間は生かされとる」

人間は生かされとる。いつもそう思ってますねん。
紙1枚にも裏表があるように、五十年生きてきたとすれば、良くても悪くても五十年の人生や。
世の中にも返していかなぁあかんのに人間はおかしいですね。

人からしてもらうことばかりを考えます。
返せる時が来たら、世の中に返さなあかんのです。
そんなことばっかり考えているから、私は、いまだに百万円の貯金もないんやなあ (笑)。

会社も、もう引退の歳やけど、私にはまだしたいことがありますねん。
独立した時に、ともにやってくれたもんが定年になってから、自分も辞めたいんや。
それが一番自分がやらなぁあかんこと。
自分の責任でそうしたいと思って頑張ってます。

あとは二代目、三代目がやってくれたらええねん。
それに、人の世話ばっかりして、借金増やしたから、自分の時代で返さんとあかん。
今は商売が小さくなってるのに、どこの会社も過去の借金がまだ残っとるわけや。
それを十分の1ぐらいにしといたら、引き継ぐもんがやりやすい。
それをしときたいんです。

自分が財産を残したいとか、なんやらしたいとか、そんな気はこれっぽっちもありません。
こないして給料払って皆が飯を食えたら、会社としてはそれが一番大事ちゃいますか?
それが企業の大きな責任とちゃいますか?


この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。

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